複雑・ファジー小説

Re: STORM[本編 UP!] ( No.123 )
日時: 2015/01/20 23:42
名前: ブラッドオレンジ (ID: 4pf2GfZs)

サイキックである結城 道郎の能力は、大地や蕎川と違いわかりやすい物ではない。
もし世界がSTORMなど必要としないほど平和だったなら、道郎は無能力者も同然だろう。

道郎の能力は、戦う相手の『悪意』を感じ取り、それを自らのエネルギーに代えるという、ただでさえ異常なサイキックの中でも群を抜いている能力だ。
道郎や他の研究者はこの仕組みをシャドウエンジンと呼ぶ。

相手によって自分の力量を変える事が出来る、という点では天に似ている。
しかし、天の場合は自ら力を相手に合わせている。道郎の能力はそれと違い、無意のうちに自分に影響を及ぼしている。
そのうえ、他人の心にまで干渉してしまうというのは、サイキックの能力でもあまり無い。

この能力から、道郎がSTORMで地位を得るのはもはや約束されたものだった。
何せ悪人と戦うのだから、能力を使わない手は無い。
それに、能力を抜きにしても道郎の戦闘能力は高いため、STORM内ではかなり重宝されている。
近頃は本部の方もその噂を聞きつけ、道郎のスカウトに乗り出しているそうだ。


だが、どんな能力にも付き物であるが、やはりデメリットは存在する。
道郎の場合は、彼の素顔を見れば歴然である。
彼は人の悪意に触れすぎた事によって、その心を蝕まれ、さらには外見にも被害がわたった。
「今の道郎の性格は能力により形成されたものである」と言う人間も多く、実際のところ、以前の道郎はもっと優しかったという。

それでも道郎は悪人と戦い続ける事を選んだ。
そういう生き方を選んだ。
彼は自分で、もうそれ以外の道はないと悟っていたのだった。