複雑・ファジー小説

Re: STORM[感謝!参照2000突破] ( No.129 )
日時: 2015/01/29 23:50
名前: ブラッドオレンジ (ID: BYbKc4ae)

フロントガラス越しに操縦士の鳩が豆鉄砲を食らった様な顔が見える。
聖子はまずは操縦席目がけて突っ込み、内部へと侵入する。
そこで操縦士を殺す予定だったが、勢い余って後部座席まで転がり込んでしまい、期待が大きく揺れた。
「うわわ、っと!」
バランスを崩しそうになったところを壁の突起に捕まり立て直す。

「動くな!」
だが、即座に敵の兵士が銃を突きつけてきた。
思ったより内部は広く、左右両側に三名ずつ、計六名が乗り込んでいたようだ。
しかし、見た限り全員能力を持たない一般兵と思われる。
そうとなれば、聖子は自分のすべきことに迷いを見いださなかった。

「っっ!!」
手始めに、一番近い兵士に近づき、彼の腕を『手刀で』切り落とす。
手元からショットガンを奪うと、それをバットのように振るい、ショットガンの持ち主だった兵と、その隣に居た兵を一気に吹き飛ばす。
「き、貴様——!」
「遅い」
ショットガンをまるで飴細工の用に簡単に折り、それと同時に今度は逆側の老いた兵のもとへ近づいた。
その兵の脚を足裏で蹴り、骨を折る。続いて倒れそうになった老兵の顔を両手でがっちりとホールドし、顔面に向けて膝蹴りを食らわせた。

恐ろしい——と、残された三人の兵は冷や汗を浮かべた。
もっともそのうち二人は、そこから数秒も立たずして聖子に腹部を貫かれて死亡したのだが。

「あ、あああああ…」
操縦士を覗けば一人になってしまった兵を見て、聖子はその怯えっぷりに侮蔑の目を向けた。
「ま、そんなもんだよねー」
ゆっくりと、兵士に近づき彼の方に手をかける。
「安心しなって、すぐ楽にしたげる」
聖子の手が、だんだんと肩から兵士の首筋へ近づいていく。兵士はそれを振り払うことも出来ず、ただ恐怖に打ち拉がれていた。
首筋ににじむ兵士の汗を拭うと、聖子はそこに『噛み付いた』。

「あっ…」
数秒間、機内の時が止まったように静寂が続く。
やがて液体を啜る様な音がして、それから聖子は口を放した。
「ごちそうさま」
口周りに付いた血を舌で拭いながら、胸の前で手を合わせた。
血気を抜かれた兵士の顔は、青く皺くちゃで、まるで干しぶどうのようになっていた。