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複雑・ファジー小説
- Re: STORM[感謝!参照2000突破] ( No.130 )
- 日時: 2015/02/01 23:22
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: BYbKc4ae)
漆原 聖子は、一般的に吸血鬼と呼ばれる存在である。
人の生き血を啜り、己の養分とし、太陽や十字架の部類に弱くニンニクを大の苦手とする、B級ホラー映画の間では定番中の定番のあの怪物である。
聖子は中世のヨーロッパで突然変異により生まれた吸血鬼の子孫で、百年ほど前に祖先が日本に移住してきたため日本で暮らしている。
昔は人ならざる者たちも、差し支えなく人間社会の中で生活を送っていた。
だが、時代の変化に伴い、そういった人外たちは住処を無くしていった。
高貴な吸血鬼の一族だろうと、その時代の流れには逆らえなかった。
並外れた生命力と繁殖力の高さで歴史に名を残してきた吸血鬼たちだが、次第に彼らも滅びていった。
それゆえに、聖子は大変貴重な存在であり、そして孤独な存在だった——。
様々な研究機関に追われ、心も体もズタボロになった彼女だったが、STORMに入ってからは徐々に自分への意義を見いだしていた。
それもこれも、すべては結城 道郎のおかげなのだが、それを道郎自身は知る由もなかった。
上空で大きな爆発音が響いたかと思えば、クライシスの攻撃ヘリがそのずんぐりとした機体を斜めに傾けながら墜落してゆく。
パラダイス00の壁を削りながら道路の真ん中に先頭から突っ込み、さらに爆発した。
「…」
その様子を、背中越しに音だけ聞いていた蕎川は未だ道郎に押さえつけられたままだった。
『隊長、終わったよー』
「ご苦労」
手短な報告を受け一息つくと、道郎は銃の引き金に置いた人差し指に力を入れた。
蕎川の後頭部から血が飛び散り窓に付着し、まるで彼の頭に真っ赤な椿の花が咲いたようで妙に滑稽な絵となった。
「こっちも終わった」
約一時間半に及ぶSTROM対クライシス兵隊の戦いは、これにより終結した。
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