複雑・ファジー小説
- Re: STORM[感謝!参照2000突破] ( No.131 )
- 日時: 2015/02/07 01:01
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: BYbKc4ae)
第七話『支配者の影』
蕎川殺害から数分後。
数台のSTORMのトレーラーがパラダイス00の周りを取り囲んだ。
中から防護服を着た現場処理担当班が降りてきた。
彼らは血と瓦礫に埋め尽くされた現場を綺麗に片付けるためにこの場に呼び出される。
班員は皆がプロ中のプロであり、さらには能力者もその手伝いをするため、現場の修復はたったの一日で終わる。
店側としても、これだけ派手に壊されておいてそのままにされてはたまらないだろうし、当然の責任と言える。
「いやはや、今回も随分と暴れたねぇ」
常山が倒壊した現場を見ながら、にじみ出る汗を腕で拭う。
本来なら彼が出向く必要は無いのだが、どうやら興味本位で来たらしい。
「わざわざご足労すまない、常山」
「なに、たまたま近くにいたもんだから、寄っただけさ。しかし、君はすごいな。スーツや薬品の補助なしでコレか」
「そこまでやった覚えは無いんだがな」
煙草を吸おうと懐を探る道郎。だが、どこかに落としたのか見つけられない。
それを察して、常山は自分の煙草を道郎に渡した。
「ん」と道郎は動きだけで礼を伝え、自分勝手に煙草を吸い始めた。
一服しながら店内をぶらついていると、不意に通信が入った。
『シャドウフェイス?聞こえる?』
「あぁ、ヴァネッサ。何の用だ」
『つい数分前からクラッシュエースの通信機と連絡が取れなくなっているわ』
「………」
ヴァネッサの報告が暗に意味している事が、道郎はすぐに理解できた。
『それで気になって彼の通信機から、通信記録を抜き出したの』
正直、そんな機能がついてる事が驚きだが、しかし道郎は黙って続きを聞いていた。
『数分前、クラッシュエースは何者かと連絡を取っていたわ。そして、その相手の声はまるで“あなた”にソックリだった』
「そうか」
『確認のために聞くけれど、クラッシュエースと別行動になった後、彼と連絡を取った?』
「いや、とっていない」
道郎の即答に、ヴァネッサは小さく「やっぱり」と呟いた。
道郎は緊迫したこの状況の中でも、やはり冷静で、焦りを見せなかった。
ヴァネッサとの通信を切ろうとしたその時、後方から一人の処理班員が駆け寄ってきた。
「結城隊長、あちらの方から死体が見つかりました」
「…誰のだ」
一呼吸置いてから、処理班員は答えた。
「桐島 蓮助——クラッシュエースのものと思われます」