複雑・ファジー小説
- Re: STORM[感謝!参照2000突破] ( No.132 )
- 日時: 2015/02/17 23:15
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: BYbKc4ae)
クライシスの制圧から帰った道郎は、疲れた体を引きずりながら幹部室へと来て報告をしていた。
本来の顔は、隠してる訳ではないが露にしていると人の視線を集めるので、また皮膚を装ったマスクで隠している。
革製の椅子に深く腰を掛け、道郎の報告を聞く彰。
照明が切れかかっているのか、二人に照らす光は時たま点滅している。
「今日の午後13時43分、パラダイス00を占拠していたクライシス兵の鎮圧に成功しました。主力の兵のうち、一人を殺害。もう二人を捕獲しました。一人は『プレデター』、もう一人は『キリングクイーン』と呼ばれる二名です。今回の件による一般人の被害者はでませんでした」
ここまでは良い報告であったが、道郎が咳払いを一つした後、話題は悪い報告へと切り変わった。
「それともう一つ。こちらから、死者が一名出ました」
「誰だい?」
「桐島 蓮助です。四階のエスカレーター付近で死体が発見されました。おそらくは敵の奇襲にあったものと考えられています」
彰の目元に皺が一気に増える。
何かこみ上げるものを抑えるように歯を食いしばっているのか、口を一文字に閉ざしたまま、彰は黙り込んだ。
「…了解した。ありがとう。お疲れさま」
報告を終え、エレベーターに乗り込む道郎。
目的の階のボタンを押し、エレベーターのドアが閉まると同時に、道郎は力なく壁に寄りかかる。
「…」
今日の朝、自分の隊の隊員の死を報告する彦を見て、その気持ちが理解できずにいた道郎だが、今なら彼の気持ちが手に取るように分かる。
自分の仲間の死を、改めて口にして報告する事で、その現実を無理矢理にも思い知らされる。
それに、道郎が隊長になってから、彼の隊員を死なせたのは初めてだった。
今回の蓮助の死は、道郎にとって一生忘れる事の出来ない苦い経験であり、クライシスに対する憎しみをさらに燃え上がらせる助燃剤となってしまった。