複雑・ファジー小説
- Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.16 )
- 日時: 2015/01/05 22:24
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: 4pf2GfZs)
STORMの日本支部は、東京都新宿区にその拠点となるビルを所有している。
外見的には他のビル群となんら変わらないため、あまり目立たない。それでいいのだ。このSTORM日本支部は一般人に場所を隠す事を重視している。なので木を隠すなら森ということわざにならい、この場所に支部を建てた。
設立当時は山奥に構えていたのだが、しかし、そこでは逆に目立ってしまい、一度襲撃された事があり、その反省をふまえている。
支部の内装は隅々まで清掃が行き届いていて、一見すると他の会社のビルと変わった所はあまり無い。だが、いざ上の階へ上ってみると現代日本では考えられないほどに進んだ最新鋭の機器であふれている。
さらに中間の階層には所員用の宿泊設備もあり、大変充実している。
帰ってきた道郎は、無駄に広いエレベーターに乗って、最上階の幹部室へ向かっていた。
そこは日本支部の幹部連中が集まり、会議や報告をする場所だ。その奥には支部長の部屋もある。どちらもこの狭い日本には勿体ないくらいに広い。インド象を十匹持ち込んでも埋まりそうにはない。
エレベーターは市販の数倍の速さで最上階まで上り、甲高いベル音で到着を知らせた。
幹部室へ入ると、黒いタイルが敷き詰められた床の上の円卓に、ただ一人だけ座っていた。
「ずいぶんと早い到着だな。仕事は片付いたのか?」
眼帯をつけたスキンヘッドの厳つい男。今着ているラフなコートよりも黒い革ジャンの方が似合ってそうだ。
彼は榊原 彦(さかきばら ひこ)。この部屋にいることから察せられるが、STORM日本支部の幹部の一人だ。第二部隊の隊長を務めている。
「あぁ。お前は?そっちも仕事だったのか?」
「…死んだんだよ、うちの隊員が。その報告にきた」
悔しそうに告げる彦の顔は、元から怒ったような表情しているだけあって迫力を増している。
「そうか。それは、すまん」
彦の気持ちを感じ取って、道郎はそれ以上は言わなかった。
彦は強面であるが、しかし、自分の仲間を家族のように思うほどに情に厚い。人間としては大変優秀な人材だ。
それというのも、彼の出生に関係しているのだが、彦自身あまりそれを話そうとしない。相当につらい過去なのである。
「支部長もまた人情味あふれる人だ。この報告を受けて泣くかもしれん」
彦は冗談めいた事を言うが、どうしても声色に寂しさを隠し切れていない。
室内の空気が重くなったところで、支部長室の扉が開いた。
中から出てきたのは、支部長である黒瀬 彰である。グレーのスーツと蓄えたあごひげが、威厳を醸し出している。
「おぉ、来ていたのか二人とも。私を待っていた、ということは報告かな?」
道郎と彦は互いに目を合わせ、彦が先に言えと目配せで合図した。道郎もそれを了解して小さく頷く。
「九十九 鯨の件についてです。午前06:13、目標の殺害に成功しました。奴が破壊した道路や刑務所の設備については、政府が修理費を回してくれるとの事です」
「うむ、了解した。おつかれさま。では、榊原君」
「はい」
彦はためらいながらも、自分の隊の隊員の死亡を告げた。死亡したのは若津 五郎。今年で二十歳という、まだ若く将来の明るい隊員だった。北海道への遠征の際に、敵に狙撃され命を落としたそうだ。
「…そうか、若津君が、か」
案の定、落ち込んだ表情で呟く彰。彼にとっても隊員は家族のようなものだ。一人死んだだけでも、その悲しみは計り知れない。
表情を曇らせる二人に対して、道郎は普段と変わらぬ冷静な表情だった。死者が出た事を何とも思っていない訳じゃない。だが、それでも二人ほど気持ちが沈んだりはしなかった。
その理由は、道郎自身にもよく分かってない。