複雑・ファジー小説

Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.20 )
日時: 2014/11/06 22:57
名前: ブラッドオレンジ (ID: LTdV0xGg)

報告を終え、道郎はとりあえず煙草を吸うための休憩室を探し始めた。必要以上に広いこのビルには階ごとに休憩室があり、そのうち偶数階だけが喫煙可となっている。
すぐ下の階におり、休憩室を目指して廊下を歩いていると、急に曲がり角から現れた女とぶつかってしまった。
「きゃっ」
体格のいい道郎に比べ華奢な体つきのその女性は、衝撃によろめき、手に持っていた紙の資料を落としてしまった。
STORMの制服を着ているため、ここの事務員と思われる。
「す、すいません…」
「いや。俺も注意不足だった。すまなかったな」
謝りながら、床にぶちまけられた資料を拾うのを手伝おうとする道郎。すると、その資料の中に紛れていた小さな写真を発見した。
そこに写っていたのは、この女性事務員と見覚えのある若い男。
「若津 五郎か…」
写真に写る爽やかな笑顔の若津を見て、思わずその名を口にしてしまう。他の隊とはいえ、一度くらいは顔合わせした事があるので、すぐに彼だと分かった。
「彼とつき合っていたのか?」
「…はい」
事務員は切なそうに呟く。
その様子からすると、若津の死は知っているようだ。よくよく観察してみると、目が腫れている。知らせたのはおそらく彦だ。支部長相手の報告でもかなり気が滅入っていたようだが、恋人へ訃報を知らせるのはさらに辛かっただろう。
道郎は彼なりに気を遣ってか、すぐに写真を他の資料とともに返し、静かに頭を下げた。
「辛い事を思い出させてすまない」
「いえ、いいんです。覚悟はしていましたから。それに、彼も同じはずです」
そういいながらも、彼女は今にも倒れそうなほど弱気な顔をしていた。後で事務局長に気にかけるよう言った方がいいだろう。
「君、名前は?」
「櫻 頼子(さくら よりこ)です」
「覚えておこう」
名前を聞いたことに深い意味はなく、ただ今後彼女に何かあったときのために覚えておこうと思い聞いたまでだ。
頼子は名前を告げると、一礼して足早にその場を去っていった。きっと彼女には仕事が残っているのだろう。
そんな彼女を差し置いて休憩するのも少し気がひけたが、しかし今はやるべき仕事も特にない。道郎は去っていく頼子の背中を見届けながら、再び休憩室へ向かった。