複雑・ファジー小説
- Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.22 )
- 日時: 2014/11/07 23:44
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: LTdV0xGg)
サッカーコート一つ分の広いフィールドの上に立ち、道郎は改めてその広さに感心する。
心に落ち着きを持たせる白一色の空間には、道郎と汐しかいない。大地と薫は先ほどの場所から中の様子を見物している。
薫なんかはいつの間にか自前のタパネルッチ式携帯端末をその手に持っていて、何かを打ち込んでいるようだ。
隊員達の事をよく観察し、研究する事を仕事としている薫にとって、それは欠かせない物なのだろう。
「結城隊長」
道郎と数十メートルの距離を取って立つ汐が、よく響く声で呼びかけて来る。
「準備は整ったか?」
「はい。いつでもいけます」
即答した汐は、今か今かと始まる瞬間を待っている。気持ちが先行しすぎているのか、すでに腰に提げた2丁拳銃に手をかけている。見た目は普通の物と変わらないが、おそらくはSTORMの開発部門製の特殊な物だろう。
『じゃ、始めてオッケーですよ』
場内に取り付けられたスピーカーから薫の声が聞こえて来る。どうやらこっちの会話は筒抜けらしい。
薫の声はいまいち緊張感の無い間の抜けたものだったが、道郎と汐の間に流れる空気は変わった。
殺意、闘争本能、警戒心、緊張感——すべてが入り交じった重たい沈黙が場を支配する。
「——!」
先に動き出したのは汐だった。
しかし、取り出したのは2丁拳銃の方ではない。背中に持っていたショットガンだ。
無駄の無い動きでそれを取り出すと、早速一発撃ち込んできた。だが、道郎もそれを真正面から受けるほどバカではない。
前方に転がりながらそれをよけ、起き上がると今度は勢いを利用して前方へ跳躍した。
その間にも汐は銃弾の排莢と装填を終えており、いつでも撃てる体勢となっていた。だが、道郎の動きがあまりにも速すぎたため、彼は道郎を迎え撃たず、跳んで来る彼に対し避けの動作を取ってしまった。
(やっぱり、はやっ——)
道郎の動きに感心していた彼の思考が、突如ノイズがかかったように乱れる。
気づけば、汐は壁へと飛ばされ、大きく背中を打ち付けていた。
言うまでもなく道郎の仕業で、道郎は着地の際に先に手を地面につけ、腕を支えに体の向きを変え、離れようとした汐の体を脚で捕まえ近くの壁まで投げ飛ばしたのだ。
予測してか、はたまた機転が利きすぎているのか。どちらにせよ彼の迅速な動作は常人に真似できるものではなかった。
「やはり『ソルジャー』じゃ『サイキック』には敵わないかね」
場内の一瞬の攻防を目で追いつつ、薫はぽつりと呟いた。
その横で大地は、心配そうにしている。
「汐だったらけっこういけると思ったんだが、大丈夫かな…」
「彼も彼ですごいんすけどねぇ」
薫は端末から現在分かっている汐のデータを表示する。
汐の経歴と身体能力や健康状態にについて表示されていて、名前の横には『カテゴリー:ソルジャー』と小さく書かれていた。