複雑・ファジー小説
- Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.30 )
- 日時: 2014/11/13 23:54
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: LTdV0xGg)
「んで、現地についたらどうすればいいの?」
転送機の準備が整うのを待つ間、暇になったのであろう聖子が道郎に訪ねる。
「まずは人質の救助だ。“クライシス”が現れたビルの最上階に奴らは人質をとっているらしい」
今回の戦場に選ばれたのは、現在新宿で最も名高い人気スポットと呼ばれている『パラダイス00(ゼロゼロ)』。その一号館である。
若者御用達のアパレルショップや高級レストラン、アミューズメント施設も取り揃えており、平日だろうとお構いなしに人であふれかえる。
警備も充実しているはずだが、やはり相手も一筋縄じゃいかないらしい。
「その他の客の避難は既に完了しているらしいが、まだ避難していない客もいるかもしれない。間違えたりするなよ」
「わかってまーすよっ」
レッドファングと名乗る彼女は、その名に似合わないくらい真っ白な歯を見せながら笑う。
これから戦闘にいく格好とは思えないほどカジュアルな服装は、妙にファッションセンスに秀でており、何もない日に都心なんかを歩いていたらすぐナンパかスカウトマンに捕まるだろう。
スタイルも良し、顔も良し、と何故こんなところで戦闘員をやっているのかが不思議なほどの逸材である。
聖子から少し離れたところでは、鈴音が愛用している日本刀の手入れをしていた。
「鈴音」
そこに遠慮なく、誠が近づいてゆく。こちらもまるで休日の大学生のような服を着ており、彼の落ち着いた感じに似合っている。
「今朝も戦闘があったろう?あまり無理はしない方がいい」
過保護なまでに鈴音を気遣う誠。そこには愛があるが、しかしその愛は恋愛とはまた違う、まるで血の繋がりのある家族間の愛のような暖かみがあった。
それもそのはずである。誠にとって鈴音は、実の姉のような存在なのだから。
「別に無理なんかしてないわよ。それに、今朝の相手は雑魚だったしね」
「それならいいけど…」
納得したようなことを言うが、表情はそれとは反対にまだ不安が残っている。
情けなく下がる誠の肩にクラッシュエース——蓮助がそっと手をのせる。
蓮助は頭部に悪魔の髑髏でも模したかの様な禍々しい形のフルフェイスヘルメットを着用しており、表情が読めない上に彼は無口である。
なので言いたいことが明確に伝わってこないが、しかし励ましてくれているのは誠にも何となくわかった。
だが、不安がそれで払拭された訳ではない。真剣な眼差しで刀を見つめる姉の背中に、誠はいつかふと消えてしまいそうな危うさを感じ取った。