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パラダイス００の南方にそなえるビルの屋上から、鈴音と誠はパラダイス００の様子を窺っていた。
「どうやら、あっちもあっちで油断してるわけじゃなさそうね」
大きな窓の向こうには、機関銃を構える兵士たちの姿が見える。
胸には、忌々しき「C」の文字。ご丁寧にも自分たちが何者かを説明している。

彼らはクライシス。現在日本で数少ない『SSS(トリプルエス)』の認定を受けている犯罪集団だ。
その思想はアドラムという架空の神のお告げに基づいているとされ、いわゆる宗教絡みの厄介な集団である。
クライシスは現在世界各地でその破壊活動を行っているが、現在はアジアで多く活動している。
目的は至極単純、よりよい世界の創造である。彼らの崇拝するアドラムという神は、今の世の中は間違っていてその再生には行き過ぎた文明社会への制裁が必要だと説いているらしい。
それに従い、彼らは自分たちを新世界創造のために働く、いわば救世主の一人だと信じ犯罪の限りを尽くしている。
客観的に見れば愚かで不条理な行動であるが、しかし、時として人は何を自らの支えとするか見当がつかない。

鈴音は懐から携帯端末を取り出し、建物内の地図を確認する。全部で七階。五人ですべて回るのはさすがに無理があるが、幸いなことに人質のいる場所はわかっているらしい。
二階と最上階に大きなホールがあり、そこに人質はまとまっているらしい。軍事衛星がクライシスの無線の電波を拾い、会話を盗聴したのだ。
「でも、あんまりそれを鵜呑みにしちゃうのはよくないわよね…」
何せ相手はSTORM相手に何度も戦っている集団だ。人工衛星の事などお見通しで、あえて嘘の情報を流している可能性もある。
「とりあえず、突撃が最優先か…」
鈴音は端末を仕舞うと、後ろに立っていた鈴音を呼ぶ。
「もう行く？」
「えぇ、グズグズしてると人質に何かがあるかもしれないし…」
今回のクライシスの目的は未だハッキリとしていないが、人質をとっているという事は何かをやらかすつもりがあるのは間違いない。
一刻も早く、奴らの暴走を止めなければならない。