複雑・ファジー小説

Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.42 )
日時: 2014/11/19 23:05
名前: ブラッドオレンジ (ID: LTdV0xGg)

「やっぱり、あれは敵の嘘の情報だったわ。人質なんて一人もいない」
小型のインカムから道郎へと報告する鈴音。彼らも既にビル内に入って二階を制圧したようだが、そこにも人質は見当たらなかったらしい。
誠は離れた場所で壁に寄りかかりながら、つまらなそうにしている。どうやら彼はあまり道郎を好いていないようだ。
『そうか。では、お前はキメラと下へ。俺はクラッシュエースと共に上へとあがっていく。人質を見つけ次第救助するように。ちょうど真ん中の四階で合流するぞ』
「了解」
通信を切ると、鈴音は指示通り下へ向かおうと、誠に呼びかけた。誠は壁から背中を離し、姉に着いていこうとする。
その時だった。彼は遠方から聞こえた微かな空気を切る音から、何かが迫ってきてるのを察した。そして瞬時にそれが姉を狙ったものだと気がつくと、考えるより先に体が動き、力任せに鈴音を突き飛ばしていた。
「ぐあっ!」
「誠!?」
鈴音をどかした直後に誠は、南方から飛んできた矢に胸を貫かれ、床に倒れ込んだ。
「くそっ…」
誠が自分で刺さった矢を抜く傍らで、鈴音は矢の飛んできた方向を確認した。
素早く走り去る背中を、視界の端に捉えた。手に弓を持っていたので、おそらくあれで間違いない。
鈴音は刀を抜き、すぐにその人物を追いかけた。
行動こそ冷静かつ迅速であるが、鈴音の心は怒りに燃えていた。してはいけない油断をしてしまい、その結果誠を傷つける事となってしまったからだ。
自責の念を感じながら犯人を追いかけ走っていると、エスカレーター中央に備えた丸形の広場に出た。
犯人の姿が見えないのでさらにその先へ逃げたかと思ったが、気配を感じて足を止めた。
ヒュンッ、と上空から矢が流星の如く鈴音の足下へ飛んできた。なんとか後ろに下がって避けると、顔をあげて天井を見る。
「っ!」
こちらへと落下しながら矢を構える敵の姿がそこにあった。息する間もなく放たれた次の矢は、わずかに鈴音の頬をかすり地面へと刺さる。
「…どっかで見た事あると思ったら、君だったか」
落下してきた敵の胸には、やはり『C』のマーク。がっしりとした体つきに、体育会系な印象を持たせるスポーツ刈り。
鈴音は彼を見てあからさまに不快な表情をする。
「ケージぃ?まだそんな事やってたのあんた?」
「うるさいな。何をしようが僕の勝手だろう」
首を短く横に曲げ音を鳴らす。鈴音は昔から何度も見てきた、矢島 啓司(やしま けいじ)の癖である。