複雑・ファジー小説

Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.46 )
日時: 2014/11/23 22:57
名前: ブラッドオレンジ (ID: LTdV0xGg)

「さて、じゃあ君はそこで大人しくしていることだね。幼なじみのよしみとして命は助けてあげるよ」
「ふっざけんな…!」
無理にでもワイヤーをちぎろうとするが、その度にワイヤーは肉体へと食い込み、体のあちこちが悲鳴を上げるだけである。
ボラル合金製のスーツは耐久性はあるが、薄さ故に刃物や鋭利な武器に弱めである。おまけに啓司の使うワイヤーもボラル合金製ときたものだから、相性は最悪だ。
一人あがき続ける幼なじみに憐憫を帯びた視線を向け、啓司は彼女に背を向ける。
だが、その先に、彼の行く手を阻むべく仁王立ちで待ち構えている者がいた。
「待てよ。姉さんにそんな仕打ちをしておいて、僕がただで許すと思うか?」
「…たしか、『キメラ』だっけ?」
矢筒に仕舞われている矢の一本に手を掛けつつ、啓司は確認するように誠の顔を見た。
最愛の姉を傷つけられたことによって、誠は息を荒くしていた。額にはわずかに青筋が浮かんでいる。
「君も姉と同じ目に遭うつもりかい」
矢筈をつまみそっと矢を抜き出すと、そこからの啓司の行動は速かった。
わずか一秒の間に矢を弦に引っ掛け、最大まで引くとすぐに手を放した。矢が誠の心臓目がけ飛んでいく。
しかし、誠は避けようともしない。
やがて誠へと到達した矢は、何かに押し返されるように「く」の字に折れ曲がってしまった。
「ちっ、硬化か…」
誠は先ほど兵士たちと戦った時のように体を鱗で覆っていた。
鱗はボラル合金のスーツと違い厚みがある。だからたとえ刺さったとしても心臓には届かない。
つまりは真っ当な矢では誠には効果がなくなったという事だ。
「まあいいか」
啓司は次の矢を取り出し、即座に放つ。誠はそれと同時に床を大きく蹴った。
鍛え上げられた足をバネのように使い、一気に前へと進んでいく。向かいくる矢を気にする必要はない。何もせずとも鱗に弾かれる。
だが、その矢はダミーだった。一本目の矢の背後から今度は違う種類の矢が飛んでくる。
これもまた、気にする必要のない矢——だと誠は思っていた。
しかし、直前で矢の鏃が花のように真ん中から開くのを見て、反射的にかわそうとした。それも空しく、矢は誠の体に「刺さる」のではなく「張り付いた」。
「!?——があぁっ!」
誠の全身を電流が走る。
今しがた啓司が放った矢は、相手へと電気を流し込む「稲妻」という矢だ。
稲妻を受け、地面に仰向けに倒れ込む誠。
それを見下すように立つ啓司。
二人の間の勝敗はここに決した、のだが。
「…どうして、笑ってるんだい?」
不思議そうに訪ねる啓司に、誠は掠れた声で答えた。
「俺は姉さんの役に立てればそれでいい」