複雑・ファジー小説
- Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.48 )
- 日時: 2015/02/07 01:03
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: BYbKc4ae)
第三話『パラダイス00(後編)』
鈴音たちが矢島啓司との戦闘を繰り広げていたその頃。
パラダイス00の三階——ゲームセンターやカラオケなど、アミューズメント施設を取り揃えたその階では、道郎と蓮助が探索を続けていた。
どうやらこの階にも人質はいないらしく、階の趣旨にそぐわない静けさが充満していた。
(ここも人質の気配ナシか…。やはり、この上か?)
道郎は顔を上に向けるが、天井を気にしている訳ではない。その先にある四階へと意識を向けていた。
「隊長、自分は早急に上の階へと行った方がよろしいかと」
石像のように道郎の後ろでどっしりと構えていた蓮助が謙った口調で提案する。彼の声はドスが利いてるうえ、マスクでこもっているので道郎すらも敵と間違えそうになる。
あまり表面の特徴で相手を印象づけるのは良くないが、蓮助の風貌からは悪意と憎悪しか感じ取れない。
「あぁ。おそらく人質はそこだ。行こう」
「はっ」
忠誠心がよく現れている、元気のいい返事だ。悪い気はしないが、こう大男を従えていると正義の組織ではなくギャングと思われてしまいそうだ。
「しかし、今回のやつらの狙いは何なのでしょう」
蓮助がマスクに手を当てうなる。
「さぁな。だが、それを考えるのは後にすればいい。まずは人質の救出だ。目的は拷問でもすれば聞き出せる」
「…拷問ですか」
気づいたときには時すでに遅し。蓮助の抱える過去を思い出して、道郎は取り繕おうとする。
「今のは失言だった。悪かったな」
「いえ」
道郎が謝らざるを得ないほど、蓮助は重いトラウマを抱えている。
もとは蓮助は、アフリカのとある地で、奴隷としてとある大富豪に飼われていたのだ。奴隷といっても、ペット程度の愛情は注がれていたので、他に比べれば悪い暮らしぶりはしていなかった。
だが、その大富豪が麻薬の密売の手伝いをしているということで、地元の警察が検挙に乗り出した。それを知った大富豪とその家族はすぐさま国外へ逃亡。蓮助は一人、大きすぎる屋敷に残された。
警察に保護され、やっとマトモな暮らしができると思ったのもつかの間。
警察は重要参考人として蓮助を連れ、取り調べという名の拷問を行った。どうしても彼らは、その大富豪の尻尾を掴みたかったらしい。一介の奴隷などが彼の秘密など知る由もないのに、その身に鞭を打ちつけ、飼い主の居場所を吐けと迫られた。
拷問は三日三晩続いた。終わる頃には蓮助はもう物を言うのも二本足で立つのも出来ず、ショックで半分記憶喪失になっていた。
だが、最終日の夜。彼を助けにきた人物がいた。それこそ現在のSTORM日本支部長、黒瀬 彰その人だった。