複雑・ファジー小説
- Re: STORM[オリキャラ募集中] ( No.49 )
- 日時: 2014/11/25 18:47
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: LTdV0xGg)
『もしもし、シャドウフェイス?』
インカムから急に通信が入ってきた。呼びかけてきたのは大人びた女性の声。
通信士のヴァネッサである。
彼女は外部から見た敵の情報や現在の状況を伝える役目を担っている。外国人にしては日本語が流暢だったり、身体能力がシャドウフィスと肩を並べるほどだったりと謎な部分がたくさんあるが、それでも肩書きはただの通信士である。
『今さっき、第二部隊がそこに到着したわ。もう侵入を開始してるみたい』
「案外遅いな。何かあったか?」
『転送機の不調よ。まぁ、まだあれは未完成だから仕方ないのだけれど』
やや皮肉が混じっているようにも聞こえるが、ヴァネッサは口調こそ冷淡であるが裏表のない性格だ。おそらく他意はないだろう。
『とにかく、援軍も来たところだし、もうちょっとゆっくり探索しても問題ないわ」
「いや、もう上の階へあがる。どうやらこの階には誰もいなさそうだ」
『了解』
短い返事とともに通信が切れる。
後ろで聞いているだけだった蓮助は道郎の様子から次の行動を察したようで彼の後ろに着いて歩く。
急に道郎が足を止めた。
すぐ目の前に上の階に通じるエスカレーターがあるというのに、進むどころか後ろを振り返った。
何かを探るように目線を右へ左へ向けると、瞬きを一度して、再び前を向いた。
「クラッシュエース」
「はい」
「この場は任せた」
「了解しました」
蓮助は頷くと、懐から銀色のグローブを取り出し両手にはめた。
それを確認してから、道郎はエスカレーターへと落ち着きのある足取りで向かう。
道郎が四階へ上がった後、蓮助は周囲を見渡した。
かすかだが、何者かの視線を感じる。正確に言えば四時の方向から。しかし、そこには何もない。ただ、その先のCDショップから不穏な空気が漂っている。
恐る恐る店内を覗いてみる。が、変わった様子は見られない。客も店員もいない事を除けば、蓮助の良く知るただのCDショップだ。
「………」
耳を澄ましてみると、奥の方から音楽が流れているのが聞こえる。CDショップなのだし、別に不思議な事ではないが、一応調べてみる事にした。
商品棚の横を二つほど通った場所にある曲がり角。音が聞こえるのはその先からだ。
角に隠れて様子を窺う。
そこにいたのは一般人——いや、マネキンだった。アパレルショップなどでよく見かける、顔がないタイプのマネキンだ。
マネキンは、誰に悪戯されたのか、壁に設置されている視聴コーナーでヘッドフォンをつけ音楽を聴いている。ものを聴く耳などないくせに、誰がこんな事をしたのか。
呆れた蓮助がその場を去ろうとした、まさにその時だった。