複雑・ファジー小説

Re: [リク受け付け中]STORM[感謝!参照1000突破] ( No.78 )
日時: 2015/01/05 22:34
名前: ブラッドオレンジ (ID: 4pf2GfZs)

第五話『VS クライシス』

パラダイス00四階の目玉でもあるフードコート。若者の街にあるにも関わらず、家族連れを意識したその場所は人気スポットの一つでもある。
この時間帯は多くの人が集まり、食事をしていた。クライシスにしてみれば絶好の機会だったろう。

フードコートは三方向に入り口がある。
横に長い長方形の形をした広場となっていて、一辺は壁に面しているが、他三辺は店が並んでいて、その間に入り口が三つある。
入り口といっても、店と店の間にあるただの通り道なので、クライシス兵は各三方向の入り口を塞ぐ形で立っていた。
『西方の入り口、敵によって封鎖されています』
陰に隠れて加賀美が言う。インカムを伝い、その情報は正面入り口に構える道郎にも伝えられた。
「了解。東方は?」
『こ、こちらもです』
悪い緊張感を持った声で答えたのは、第二部隊所属、秋山天——通称『バランス』だ。
彼女はSTORM隊員としてそれなりに仕事はしているが、いかんせん自分に自身が無さげで、そのうえ人を傷つけるのを苦手とする。
敵の本陣に突っ込むメンバーとしては適役でないと思えたが、それはあくまで彼女自身の特徴だけを見ればの話だ。
天の能力を踏まえて考えると、最適とはいかないまでも、この人選は相応しいものだろう。
それに、東方から攻め込むのは天一人ではなく大地もだ。任せて不安という事はない。

「了解。では、行動開始だ」
『了解!』
『えっ!?もうですか!?』
慌てふためく天が気になったが、大地が居るので大丈夫であろう。
道郎はインカムを切ると、物陰がから姿を現し、腰に提げていた拳銃を二丁取り出した。
「!! 正面入り口にSTORM隊員発見!」
「攻撃態勢に入ります!」
配置された兵の数は二人。
舐められているのか、それともそれくらいしか人手が居ないのか。
どちらにせよ、仕事は楽だった。
「失せろ」
左右の拳銃から発せられた二発の弾丸が、クライシス兵の脳天を貫いた。
STORM製の特殊な弾丸だ。下手をすれば厚さ1メートルの鋼鉄すら貫く。
試した事がないので何とも言えないが。

道郎の合図から一分も立たず、四人は侵入に成功した。
人質は奥の壁際に集められており、おしくらまんじゅうの状態でそこに留まっていた。目隠しをされ、両手両足を縄で縛られていた。
そして、一番警戒すべき敵はというと、なんとたったの三人だった。
「やぁやぁ、STORM諸君。よく来てくれましたな」
含蓄のありそうな彫りの深い顔をした老人が、もっさりとした口ひげを揺らしながら歓迎の言葉を述べた。
初めて見る顔はその老人だけで、その横に立つ二人の女性には見覚えがある。
捕食者プレデターに殺しの女王様キリングクィーンか…」
「こりゃ面白い事になりそうですね…」
加賀美が汗ばむ頬を拭いながら笑う。
この時、STORM隊員は死を覚悟した。ただ一人、道郎を除いては。