複雑・ファジー小説

Re: [リク受け付け中]STORM[感謝!参照1000突破] ( No.84 )
日時: 2014/12/14 01:39
名前: ブラッドオレンジ (ID: gE35uJOs)

道郎は一瞬笑った後、亮二に目配せをした。亮二はひっそりと親指と人差し指で丸を作り、了承の意を表した。
「それで?どうするおつもりなのですか?」
蕎川が若干いらついた口調で道郎に問う。
「お前らを全員殺害——といきたいところだが、一人くらいは捕虜として拘束させてもらおう」
「それが出来るとでも?」
「あぁ。できるともさ」

道郎が答えたその直後に、亮二が人質たちに向かって走り出した。
「!」
それを逃すまいと、NOVAは掌を亮二に向けて、そこから素粒子で作り出した高エネルギー弾を放つ。
彼女の能力は、厳密には解明されていないが、当人曰く、この世に存在する素粒子を操る『程度』の能力らしい。
その能力により、エネルギー物質の構築を主な武器とする。
NOVAに続いてレーヴェンツもメインの武器であるPDWの引き金を引く。彼女の能力もまた厄介だ。
視認する物体の初速力を操る事が出来る。それがたとえ、生命であろうと。
能力を使い、速さを増した彼女の銃弾の餌食となったSTORM隊員も少なくない。
だが、そんな二人を前にしても亮二は狼狽えず人質目がけて走っていた。元々肝が据わっているというのもあるが、彼の能力がその自信を裏付けている。

(…能力が通じていない)
そう感じて、レーヴェンツはPDWを撃つ手を止めた。
NOVAはひたすらにエネルギー弾を発射しているが、それすら亮二の体に傷一つ付ける様子は見られない。
「レーヴェンツ君。彼はもういい」
レーヴェンツの背後から、蕎川が声をかける。
「『あっち』を狙いなさい」
しわくちゃの手を、蕎川が人質に向けた。レーヴェンツは言われた通り、弾倉を換えながら、狙いを人質の方にかえる。
それを見た亮二の表情に、少し焦りが混じった。そこを勝機と捉えて、NOVAはすかさず特大のエネルギー弾を放った。
「うおっ」
亮二はエネルギー弾に気づくと、必死で滑り込むように人質の前に立ちふさがる。
それとレーヴェンツが引き金を引いたのは、まさしく同じタイミングだった。

レーヴェンツのPDWから銃弾が連射される。だが、すべての銃弾は人質を守るようにして立つ亮二の前で弾かれる。
この時、レーヴェンツは亮二の能力を理解し、すぐに射撃をやめた。
「ビックリしました?プレデターさん。そ、この俺こそ、バスティオンこと加賀美 亮二です」
亮二は疲れを見せながらも、愛想だけは保とうと笑いながらウインクをした。
その場に居た大勢の気に障ったのは、言うまでもない。