複雑・ファジー小説
- Re: [リク受け付け中]STORM[感謝!参照1000突破] ( No.87 )
- 日時: 2014/12/14 23:00
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: gE35uJOs)
加賀美 亮二——バスティオン。
自分から半径二十メートル以内に、バリアを張ることが出来る。そのバリアは、物理的な攻撃から超能力による妨害さえも無効にする事が出来る。
STORM内でも重宝されている能力である。
「むぅ、これは一本とられましたねぇ」
亮二が人質に近づくことに成功し、クライシス側の作戦は失敗がほぼ確定した。
困ったように蕎川が眉間にしわを寄せるが、しかし、口調にはどこか余裕が残っていた。
人質を取り返されてなお、堂々とした態度をとるのは、果たして強がりなのだろうか。
もとより人質などには興味がない——という事もあり得る。
「さぁ、投降してもらおうか蕎川」
「投降?何故です?」
「人質側に亮二が居る限り、もう安全だ。俺らは気兼ねなく戦える」
今まで大人しくしていた大地が、拳をポキポキと鳴らしながら一歩前へ出る。
場合によってはすぐにでも襲いかかる、という意思表示だろう。
だが、蕎川はそれに反して笑みをこぼす。
「だからといって、降参はしませんよ。それに、まだ完全に失敗したとは限らない」
その言葉は、クライシスはまだ抗戦を続けることを意味していた。
これ以上戦うのはあまり懸命な判断とは言えない。やはり、今回のクライシスは何かがおかしい。
道郎は、懐に忍ばせたナイフに手をかける。
「へぇ。じゃあ、どうするんですか?蕎川サン」
後方で亮二が長髪を目的とした茶茶を入れる。彼は口を縫ってでもおしゃべりを直すべきだと、道郎は思った。
亮二に反応し、蕎川は亮二の方を振り返った。
「えぇ、そうですね。私は、10のミスは100で取り返す質ですので」
次の瞬間、蕎川の足元の床がそっと波打ったかと思えば、間もなくして亮二の叫び声が響いた。
「ぐっ、ああ…!」
力なく床に崩れ落ちる亮二。それとともに、彼が張っていたバリアが解かれるのが分かった。
「なっ、あああ、うっ」
「亮二!てめぇ…ッ」
大地が怒りをあらわにした表情を見せる。
いつもの穏やかな大地からはかけ離れた狂気を帯びた目線を蕎川に突きつけると共に、彼は能力を使い念力で周囲の椅子を数個浮かせてみせた。
「タダで済むと思うなよ」
大地が腕を振り上げ合図を出すと、椅子たちは蕎川という的を狙い、ミサイルよろしく飛んでいく。
だがその椅子たちは、蕎川の足元から飛び出た黒い針が刺さると同時に霧散してしまった。
「んなっ…」
唖然とする道郎たち。蕎川は瞬き一つせず、濁った目でSTORM隊員たちを睨む。
「タダで済まないのは貴方たちです」