複雑・ファジー小説

Re: この世界の為に (1−3) 不思議な少女 ( No.4 )
日時: 2014/11/22 23:10
名前: クエン酸Na (ID: 6Bgu9cRk)

>>今回から少し書き方を変えます。

 唐突に出た‘仲間‘の話。
驚いている間に、ザードは森へ連れて行かれていた。

「はぐれたら多分死にますよ。ザードさん。」

 ハルツは抑揚の感じられない声で言う。道なき道を進む彼女は疲れを感じさせない速さでぐんぐん進んでいく。
途中で毛虫など色々踏んだが気にする様子はなかった。

 

 「はぁっ・・・・・・。」


 しばらくすると、他よりひらけた場所に出た。そこには一本の巨木がまるで主の様に佇んでいて、涼しい木陰が広がったいた。
・・・その木陰には沢山の動植物が集まっていた。

 オームというつぶらでまんまるい瞳を持ち、頭はダックスフンド、体は羊とポニーを掛け合わせたような草食動物が目立って多い。
その他にはクリムゾンレッドの小さなドラゴンが空を舞い、池をウンディーネが泳いでいた。

 
ザードは息を飲んだ。


 ———すっげ、綺麗だ…。見たことねぇぐらい…。

 ぼーっと魅入っていると、後ろからハルツに小突かれた。そして振り向くと、笑顔で言われた。

「私の家はあの木の上です。お入りください。」

————へ〜、家。・・・・・・・・ん??




   「家っっ!!!???」


 ザードは思わず叫んだ。
仲間がなんたらと連れてこられたと思ったら、家。得体も知れない不審者もどきにあっさり家を教える。

 ———怪しい、何だこいつ。

 そう思いつつも急いで追いかける自分に、嫌気がさした。
凸凹とした木肌に触れて、その温かさを感じ、生きているんだと感じる。するすると登っていくハルツを、ザードは見ながら登った。

 とても見ていてハラハラさせられた。


 
 やっと一つ目の枝に着くと、そこに扉が見えた。だが、扉だとわかるまで少々時間がかかった。・・・中に入ると香草の香りが鼻腔をくすぐる。広い。そして優しい感じがした。
 だが、それもここが少女の部屋だと思うと、違和感でしかない。
よく見れば書棚の中にあるのは魔道書で、ハンガーに掛かっているのは聖服のローブやマントの類。お菓子や木の実が置いてあるテーブルには、何やらよくわからない術式の刻まれた翡翠の首飾りが置いてあった。

 ソファに座って観察すると、香草の香りで睡魔に襲われた。
ハルツはそんなザードを、

「聞け、私の話ぐらい。」

と、制してドカっと隣に座った。

 ヤギ乳のチーズと柔らかい肉を包んだ芋の揚げ物、チョシーを渡されてあの漆黒の瞳に正面から見つめられて物凄く居心地が悪くなり、ザードはハァ、と浅く短く息を吐いた。

 やっと視線を移してくれたハルツ、チョシーを頬張るザード。
しばしの間沈黙が流れた。


 「ではまず、旅を・・・・・・しましょうか。」

 沈黙を破ったハルツの言葉に、ザードは驚いてチョシーを吐き出すところだった。


続く。