複雑・ファジー小説
- Re: 異能者の日常と襲撃【11/22up!】オリキャラ募集開始。 ( No.11 )
- 日時: 2014/12/06 18:57
- 名前: るみね (ID: kzWZEwhS)
- 参照: ※ちょいグロあり
一日前……
【序章】とある惨殺事件
随分前に捨てられた廃ビル。
壁紙などというものは存在せず建物を構成する煉瓦がむき出し状態。
【帝都】の拾壱区のはずれでは珍しい建物ではないが、今のそのビルの一つの前には複数の軍警が集まっていた。
「ったく、上も面倒な事頼むもんだ」
男達の中に一人立った女性が苛々と呟いた。
スレンダーな体型を軍警の制服に包んだ女性は、崩れて来た髪に更に顔をしかめ、腰まであろうかという長い髪を手際よく結い上げなおした。
「まぁ、【ゴースト】よりはマシだろうな」
「異能者関連でしかも貴族の小言がついてくるなんて。それが嫌で下に回したんでしょうからね……」
隣であくびして睨まれながら零蝉路ヱンが答えた。
「私は五月蝿い貴族様相手じゃないからよしとするか。けど、これで逃げられたとなれば結城がなんて言いがかりをつけるか……」
「まぁまぁ……」
ブツブツ呟く女性、八千草雨季をヱンがなだめた。
「でも、妙に静かですね」
「時間は間違ってないはずだが」
眉をひそめる八千草の疑問は先に潜入し探っていた偵察班によって解かれる事になる。
偵察に入っていた三人の捜査員は少しして返って来た。
少し慌てたような混乱したような彼らは皆一様に顔色が悪い。
その不自然な姿に八千草達のなかで嫌な予感が首をもたげる。
「まさか、気づかれたのか?」
だとしたら大問題だ。しかし、男達は黙ってかぶりを振った。
「いえ、違います…………」
それだけ言って言葉を失った。
その様子に違和感を覚え、八千草ら数人は警戒レベルを上げ、静かにビルの中に侵入した。
目的の場所は建物の地下にあるのだが、そこに近づくだけで彼女達は異常を感じ取った。事件で嗅ぎ慣れた、鉄のような独特の血の匂い。
その匂いを嗅ぎ取った面々は歩く速度を速めると建物の地下に進んだ。
長い階段を下り、通路を抜けるとその空間に行き当たった。
上の階とは全く違う高さと広さを持つ十五メートル四方はあるかという巨大な部屋。中央は数メートルの空間で囲いがされ、段がついている。奥には二つ程扉もある。しかし、部屋の構造など頭には入ってこなかった。
目の前に広がる光景に現場を見慣れているはずの軍警の者達でさえ顔を歪めた。
「!?」
「や、八千草さん……なんですか、これ」
ヱンの震える言葉に雨季もなにも言葉が出てこなかった。
凄惨という言葉がまさしくあう光景だった。
その空間には何十人と言う人間がおびただしい血の海の中で倒れていた。
爆発などではない。彼らは一様に首筋や手首など動脈を切断され絶命していた。死後一日は経過しているであろう状態、充満する血と死の匂いに数人の捜査官が思わず嘔吐した。
「……ひどい」
ヱンが一番近くにいた男の状況を確認すると彼もまた首筋をまるで噛みちぎられるように抉られ事切れていたのだがその傷口を見たヱンは眉をひそめた。
いままでいろいろな現場で死体の傷を見たがここにある死体の傷はナイフや銃、その他殺人で使用されるような凶器の傷とあわない。
しいてあげるなら獣に襲われた咬み傷に似ている。
「…………」
ヱンが確認するように雨季を見上げると彼女もそのことに気づいたように微かに頷いた。
「本部に連絡……」
雨季のその言葉であわただしく数人が上階へ描け戻った。
「…………厄介だよ。たく」
八千草は力なくそう呟いていた。
そして、この事件が【帝都】の表にも裏にも影響を及ぼす。