複雑・ファジー小説

Re: 異能探偵社の日常と襲撃【12/7up!】オリキャラ募集終了。 ( No.27 )
日時: 2015/01/13 23:14
名前: るみね (ID: fYloRGSl)
参照: お久しぶりです。無理があるとか言わないで。

 【日常B】 =猫の目=


 牡丹や徹、大地や千鶴たちがいなくなった喫茶【猫の目】。
 朝食をとっていた女性も席を立ち、店内に残ったのは創平と潤以外には常連客の男性や老紳士とあわせて4人だけになった。カウンター裏では清子ともう一人のウエイトレスの女性が朝食の皿の片付けや紅茶を入れている。
 店の壁の棚に置かれたラジオから控えめの音量で今日のニュースを読み上げられるのを聞きながら潤は紅茶のおかわりを貰う。

____未明、釟区で発生した強盗事件の犯人はいまだ逃亡中です。犯人の2人組は銃を所持しており……

「あぁ、なんか軍警がここら辺でも動いてましたね」
「こんなニュースがあるのに、ここは暇ね……」
 ぽつりと呟かれた言葉に創平は頷いた。
「……言うなよ、潤さん。分かってるから」
 創平の言葉に潤も苦笑する。
「そんなのんきでいいの?依頼来るかもよ?」
 はい、とお変わりの紅茶を差し出しながら清子が微笑んだ。
「いいんっすよ。事務所には修兵さんが戻りましたし」
 創平のあっけらかんとした言葉。
「あんま先輩困らせないようにね」
「わかってます!」
 敬礼付きの創平の返事に清子はフフッと笑った。その可愛さに創平は自分の頬が熱くなるのを感じた。
「清子ちゃん、こっちにもお願い」
 隅のテーブルで新聞を読んでいた男性客に呼ばれて、清子は創平達に会釈をすると席を離れた。

「……残念そう」
 ひやかしが混じった潤の言葉に創平はブンブン首を振った。

「まぁ、なにもないのは確かにつまらないね」
 清子が出してくれた暖かい紅茶をすすりながら潤はぼそっと呟いた。
「依頼がないのは問題だけど、平和なのはいいことよ?」
 そう声をかけたのは清子と一緒に猫の目でウエイトレスをやっている浅葱つる子だ。
 ひとつに結った黒髪に細身のシルバーぶちの眼鏡、泣きぼくろが特徴な大人しめの女性で、清子よりも前から猫の目で働いており常連である探偵社とも仲がいい。
 こうして客が減った時間帯だとよく探偵社達にお菓子をサービスしたりしてくれるのだ。

「まぁ、そうですけどね」
 つる子が出してくれたサービスのクッキーをありがたく貰いながら創平は言う。潤も少し悩んでからアーモンドの混じったバタークッキーをとった。

「つる子さん。あんまサービスしなくていいのよ?事務所帰らなくなっちゃうんだから」
 清子が咎めるように言ったがあまり強くは言わなかった。
「すいません」
 そういいつつ潤はもう一枚クッキーを貰う。

「ランチ用の卵なくなりそう……」
 カウンター裏の冷蔵庫を見ていた清子が呟くとつる子は顔を上げた。
「買ってくる?」
「あ、私行きます。お店お願いします」
 猫の目の制服である黒いエプロンを脱ぐと、清子は動こうとするつる子を制して軽い足取りで店を出て行った。
「清子ちゃんいると楽ね」
「つる子さんものんきですね」
「この時間は私ものんびり出来るのよ。ね、日向さん」
 テーブル席の老紳士がつる子の言葉で微笑んだ。
「なんかないのかしらね」
 そう言うつる子の言葉に創平は苦笑した。
「つる子さんも好きですね」
「あなたたちの報告会とか聞いてると楽しそうで」
「楽しいだけじゃないっすよ?」
「ホントそれ」
 潤が同意した時に猫の目の扉の入り口のベルが鳴った。
「いらっしゃい♪」
 つる子が明るい声で対応に行った。

「それよりも目下の興味は牡丹さんの彼氏よね」
 潤の面白そうな言葉に創平が反応した。
「あ、あれってホントなんですか!」
「結構イケメンだったわよ」
「見たんすか!」
「でも、牡丹さんかなり無茶してたけどね」
「どういうことっすか」
「仕事から性格までかなりネコかぶっててちょっと面白い」
 含み笑いで話す潤の情報に創平が思わず叫ぶがガシャンと言う金属音で中断された。

「!?」
 驚いて振り返るとつる子が震える両手を上げていた。
 見れば新しく入って来た男性客二人がつる子に銃を突きつけていた。
「動くんじゃねぇ……」
 低い男の声に創平たち以外の客も気づいた。

 2人組、銃——。

 その少ない情報だが創平と潤の頭の中でついさっきのラジオの強盗犯の話が思い出された。 

「ったく、気づかないでいれば良かったのにな……」
 察しが良いつる子はどうやらなにかのきっかけで彼らが犯人だと気づいてしまったらしい。



「おぉ、おぉ。よく襲われるな。ここ」
 創平は二年前に桃矢が関わった猫の目襲撃事件を思い出す。
「暇じゃなくなったわね……」
「なに話してんだ!」
 つる子に銃を突きつけた男が叫ぶ。
 その不安定な言葉に潤は男達が正常な精神状態でないと感じ取った。
「創平のはだめ。周りに人がいる……」
 微かに息を吸った創平に潤が小声で言った。
 他の男性客や老紳士も唐突の出来事に固まっている。




「なんで猫の目はこう巻き込まれるかな……」