複雑・ファジー小説
- Re: 聖なる化け物の祝杯 ( No.10 )
- 日時: 2014/11/28 22:15
- 名前: 星ノ砂 (ID: H6fMjRQF)
◇第六話
「あっつ!あっつぅ!!なんで森に炎を吐く魔物がいるんですか!木、燃えないんですか!?」
「俺にきくなー!」
メヤルナの森に響く声。
それがダンジョンの魔法生物を刺激しているのはわかっているが、この状況で叫ばぬ人間などいるだろうか?
攻撃しようと近づくと爪の餌食になり、攻撃を避けようと一歩ひけば炎の玉が飛んでくる。まさに危機的状況。
学校長に命令され、しかたなくダンジョンに来、道らしい道を探して歩いていたときだった。
突然魔法生物がおそってきたのだ。それはもう、おまえらどっからわいてきた、とつっこんでしまいたくなるほど、自然に突進してきた。
二匹のドラゴン。目が大きく愛らしく、背も僕たちの半分ほどで子供らしいが、こんな攻撃されたあとで「かわいい」といえるほど僕は広い器を持っていない。
「いったん引くぞ、クロ。一匹ならまだしも、二匹じゃどうにもならん!」
「あ、はい、わかりました」
ダンジョンに入ってみてわかったことの一つに、スクルファーズは意外と頼れる奴だというものがある。悩まないぶん判断がはやく、常に非常がつきまとうダンジョン内では有利な性格なのかもしれない。
「え、でも引くって・・・」
「逃げるんだよ!足つかえー!!」
やっぱそうなるんだ!?
一斉にかけだした僕たちを、あたりまえのように追ってくるドラゴン達。
「17歳男子をなめんなよ!」
「五八番殿、それ面と向かっていうセリフです!てか喋る元気があるなら走れ!」
一瞬意味がわからなかった。
目の前が光ったかと思うと、ドラゴン達は驚いたように逃げ出した。ドラゴン達と同じようにスクルファーズも驚いたようで、なにもないところでつまずく。馬鹿だ、と思っていたら、そのスクルファーズの足につまづいて僕も転んだ。・・・コンニャロウ。
「な・・・なんだ?」
スクルファーズの声に合わせたように現れたのは、やはり魔法生物。
土でできた巨体、点ような黒い目、腕に光る魔方陣。
それはまぎれもない——
「ゴーレム!?」
ドラゴンを追い払った・・・?僕らを守ったのか?
ず、ず、ず、とゴーレムが動く。黒い目が僕を見つめた。
「・・・クロ、走れ!」
ゴーレムの動きがはやくなったのは、スクルファーズが僕の腕を引っ張って走り出したときだった。
追うようにゴーレムの足の動きがはやくなる。
あああああ!!と言葉にならない言葉を叫ぶ。助けてくれたと思った僕の期待を返せ!
「なあ、クロ、お前魔法ちょっとできるんだろ!?」
ずどーん、ずどーん。
ゴーレムの重いが早い足音に混じって、スクルファーズの声が聞こえる。
「初級魔法の単体技なら・・・でも、威力も速度もないですよ?」
ずどーん、ずどーん。
「それでいいんだよ。あの、ゴーレムの魔方陣を狙って・・・狙わなくてもいいからとにかく打てぇぇええ!!!」
ずどーん、ずどーん。
スクルファーズはゴーレムの魔方陣を指さした。今の僕の魔法にゴーレムを倒すだけの力はない。それをわかっていってるんだろうか・・・。
振り返ると、ゴーレムはすぐそこまで迫っていた。
・・・ん!?足はやいな!
慌てて詠唱をはじめる。
「あ、え、っと——・・・水に集いし精霊よ、我が敵を貫け、我が命を実行せよ!」
唱えたのは初級の単体魔法。ただ水の玉を相手にあたるだけで、水というのもゴーレムとの相性を考えとっさに思いついたものだ。
——だが、いくつか作った水の玉が魔方陣にあたると、ゴーレムはあっけなくくずれおちた。
「・・・は・・・?」
「ゴーレムは生物じゃない。ただの土人形さ。魔方陣を壊せばどんな巨大でもくずれさる」
スクルファーズが木の上から出てきて、言った。あれ、あんた僕が魔法つかってるときどこいってた?・・・逃げてたんだな。
それよりも、スクルファーズの言ったことについて確認しなければいけないことが。
「・・・土人形って——誰がつくったんですか?」
「学園長だろうな・・・・・ってクロ、いらつくのはわかるが、ひどい顔だぞ」
そんなにひどい顔か?
頬をムニムニやる。
「ケンカだよ、これはケンカだ。あいつは、おもしろがってんだよ」
スクルファーズの言葉にきょとんとする。
一拍おいて学園長のことをいっているのだと理解する。・・・ケンカ?
「ケンカの大セールだ」
は?
わかわない。こいつの考えていること、やっぱわかんない。
さっき頼れるって思ったのに、ことごとく裏切ってくるな、この人。
「・・・ケンカを売ってる店の店長ですか、学園長って?」
「俺達はお客様ってことだな!お客様は神様です。つまり俺達は神様ってことで、ダンジョン突破なんて簡単だってことだ!」
言葉のあやに、うまいこと言った!っていう笑顔で返すのはやめろ。