複雑・ファジー小説
- Re: Angel - Sweet side 【恋愛・ファンタジー】 ( No.11 )
- 日時: 2014/11/30 21:06
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
カレンは世界遺産になったベルサイユ宮殿を詳しく知らない。
教科書で鏡の間をみたことがある。残念ながら教科書で見ても、なんとも感じなかった。
この城の廊下をみると、あちこちに目を奪われる。誰かの肖像画、細かい刺繍が施されたソファ。
ベルサイユ宮殿とどちらが豪華なのだろうと考えた。
階段を降りて、連れていかれたのは厨房だった。
カレンは彼が連れてきた目的がわからず、ただ立っていることしかできない。
執事が指示をして、メイドが食材と食器を持ってくる。食器はすべて二枚ずつ同じだから恐らく二人分だ。
そして、執事はカレンに視線を向けて食材を指差した。
つくってほしいと言っているのだろう。
試しに包丁をもつと、執事は微笑んでいるだけだった。
恐らく料理を作る相手は金髪の男。カレンは少食すぎる彼のために腕を振るった。
機材や食材はほとんど日本と同じだった。中には見たことがないものもあるが、機会があれば後で試してみよう。
男は恐らく普段から食事はほとんどとっていないのだろう。胃や腸にあまり負担がかからないものがいいだろう。
カレンが作ったのは、チーズのリゾットとすりおろした野菜が入ったオムレツだった。
手伝いはなくても、洗い物まで一人で済ませることができた。
料理が完成すると、メイドの一人が味見をする。
料理の評価が知りたかったが、カレンは部屋に帰されてしまった
男が帰ってきた。
「おかえりなさい」
カレンは日本語で挨拶をした。
「○○○、○○○○○○」
男はカレンを抱きしめる。
異性とお付き合いしたことがない彼女は慌てて身をよじって離れる。
心臓が激しく鼓動を打っている
そもそも男がカレンを助けた意図がよくわからない。なぜここまでするのだろう。
しばらく男を見つめていると、今度は手を握られた。カレンを包み込めるほどの大きな手。
心臓の鼓動が伝わってくるのではないだろうかと思った。
夕食が運ばれてくる。カレンが作ったものだ。
男はカレンをみる。
「○○○○?」
「うん、これ私が作ったんだよ。無理しない程度に食べてね」
男はリゾットを口にいれる。
「○○○」
どうやら口に合ったらしく、次々と口にいれた。
カレンもリゾットを口に入れる。
(つめたっ!!)
思わず吐き出しそうになった。反対に男は食が進んでいる。
料理を作ってあれだけ時間が経てば冷たくなるだろう。
オムレツも冷めていた。
きっと朝食もこのような感じだったのだろう。冷めた食材は食欲を失ってしまう。
それでも男は朝食のときの様子と違い、全て食べてしまった。
反対にカレンはリゾットを半分残してしまった。
「○○○?○○○○○○」
「あ…ううん、大丈夫」
カレンは力なく笑った。
冷めたくなった料理でも全部食べた彼にカレンは感謝した。
こうして彼女は毎日欠かさず、男の夕食を作ることになった。