複雑・ファジー小説
- Re: 【第1章終了】Angel - Sweet side ( No.12 )
- 日時: 2014/12/02 21:08
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
「おはようございます。〇〇〇、カレン〇」
朝、メイドたちの声で起こされる。カーテンを開けると、太陽の光が差し込んだ。
まだ夢から覚めない。
カレンがここで暮らして5日目になった。異国の言葉はほんの僅かだが、ごく簡単な意味なら何となくわかるようになった。
そしてなぜか、毎朝金髪の男の腕の中で、目覚めている。
「おはよう、カレン」
男はカレンに挨拶すると、口付けをする。
口付けは3日目から朝と夜一度ずつされるようになった。
きっかけは言葉を少しでも早く覚えようと彼の言葉を真似したからだった。あまりにも熱烈で、思わず飛び退いてしまった。
これがカレンにとってのファーストキスだった。
それ以来、わけもわからないのに彼の言葉を真似しようとは思わなかった。
スキンシップが激しいというわけでもなく、カレンに対してだけである。
慣れというのは恐ろしいものである。彼の熱のこもった視線で見られると、逃げられないのだ。
カレンは男から少し離れ、挨拶した。
「おはようございます、アンリ」
彼の名前はアンリという。正式なフルネームは発音が難しく、長いため覚えられなかった。
互いの名前を知ったのは二日目の朝だった。
朝食を食べ終わって、どこかへ出かけるアンリを見送った後、夕飯を作るまでの時間をどのように過ごすか問題だ。
掃除をやろうとしても、メイドたちがやらせてくれない。言葉が通じないので話相手もいない。
アンリは暇を弄ぶカレンのために暇潰しに、絵本やオルゴールをプレゼントしてくれた。
夕飯の後、一緒にいるときはバイオリンで曲を披露してくれた。
アンリからも何か音楽をリクエストされたが、まさか日本の国民的アイドルの歌を披露するわけにはいかず、遠慮した。
アンリはカレンにとても優しく、日本語でなくても何を言おうとしているか大体通じた。
ここで過ごしてわかったことがある。
ここは日本ではないどころか、地球上どこにも存在しない国のようだ。
昨日、アンリに世界地図を見せて貰った。それは、カレンの知っているものとは全く違っていた。
ここはフェンリル王国だとアンリが教えてくれた。
そして、電気もガスも水道もない。ここはまるで中世ヨーロッパ時代のようだった。
そして、食事がいつも冷めているのは毒味のせいだとわかった
そのため、食事は冷めても美味しいメニューを中心に考えるようにした。
努力の甲斐あって、アンリは夕食はほとんど平らげてくれる。おかげで顔色も良くなったように見える。
しかし、それでも一人でいる時間は長い
ふとこんな悩みが頭に浮かぶ
(どうして私、こんなところにいるの…?)
声に出さずにカレンは悩んでいた。
せめて言葉が通じたら、と考えていた
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.13 )
- 日時: 2014/12/04 22:53
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
6日目になると、退屈なカレンの日常に大きな変化を迎えた。
アンリが出かけるころ、今日も彼が帰ってくるまでどう時間をつぶそうか考えていた。
そのとき、彼から一人の女性を紹介された。
ふんわりとした明るい茶髪に緑の瞳をもつ、カレンと同じ年ごろぐらいの女性だ。
アンリは女性を紹介する
「カレン〇〇〇〇〇、ソーニャだ」
彼女の名前だけは聞き取ることができた。
ソーニャは紹介されると、深く頭を下げる
「ソーニャ〇〇〇〇。〇〇〇〇〇〇〇〇」
カレンも頭を下げた。
優しそうな印象の彼女に好感を持った。
ソーニャはカレンに言葉を教えるようだ。
今まで言葉が通じないため、不便をたくさん感じていた。言葉を教えてくれる人を紹介してくれたのがありがたかった。
たとえ、厳しい勉強でもついていこうと思っていた。
最初は言葉がお互い通じないので戸惑いを感じていたが、次第に慣れていった。
意味を理解すると、達成感と快感を感じた。
何よりソーニャは年が近いということもあり、友達感覚で接することができた。
夕食の支度をする時間になると、ソーニャの授業は終わる
カレンは厨房に向かい、ハンバーグとカボチャのグラタンを作る。
少しでもアンリの好みの味付けに近づけるよう、試行錯誤する。
背後でシェフたちが細かくメモを取っている。カレンが作る料理のレシピを作成しているのだ。
カレンが作る料理は、この国では見慣れないものばかりらしい。
アンリは夕食は食べるので、同じメニューなら食べられると考えたのだろう。
朝にカレンの料理を真似したものが出ることがあるが、アンリは違いがわかるのか残してしまう。
アンリはカレンが作ったものじゃないと食べられないようだ。
(冷凍保存できたら翌朝まで大丈夫だけどな)
この国には冷蔵庫はない。地下に食材を保存するため、氷がたくさん置いてある部屋はあるが、その部屋を使って食べ物を長時間保存した後、食卓に出すのは不安だった。
アンリが帰ってくる時間になった。
「ただいま、カレン。〇〇〇〇〇」
「おかえりなさい、アンリ。」
挨拶も自信をもって言えるようになった。これからアンリと話をするのが楽しみだ。
そして、言葉を理解したらなにより彼に伝えたいことがあった。
「アンリ、ありがとう」
この国の言葉で一番伝えたい言葉だった。
地下牢から助け出してくれて、大切に扱ってくれる。目的はわからないが、彼に感謝したかった
アンリは今まで見たなかで最高級の笑顔でカレンを抱きしめた。
「カレン、ああ、私の〇〇〇!〇〇〇〇〇、〇〇〇〇〇・・・」
何度も口付けされながら異国の言葉で話は続く。甘い口付けのせいで彼の言葉に集中できない。
何度も角度を変えてキスをされると、頭がボーっとしてきてだんだん体が蕩けそうになっていく。
(あ・・・なんかこれ、愛の告白されてるっぽい・・・)
女子力など0だと思っていたのに、カレンの中の乙女が顔を出したようだ
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.14 )
- 日時: 2014/12/06 00:23
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
「おはよう、カレン。あ、寝癖が○○○○」
アンリはカレンの頭を撫でて寝癖を押さえる。しかし、寝癖はアンリの手が離れると、ピョコンと立ち上がった。
「ああ、寝癖○○可愛いな・・・」
アンリはうっとりした様子でカレンを見つめる。そして、毎朝恒例の口付けをした。
語学は生きていくためには重要だと理解した。英語は苦手だったが、この世界の言葉を理解しないと生活に支障が出る。そのため、必死に勉強した。
ソーニャのおかげでカレンの語学の学習は順調だった。日常会話程度なら理解できるようになり、アンリと滞りなく話ができる。
勉強は苦手だが、ソーニャと馬があい、どんどん言葉を知りたくなった。
アンリ以外の人物と会話も少しできるようになった。
「料理を出す前に温め直してください。」と料理人に伝えることができたので、メニューのバリエーションが増えた。
言葉を知ると、色々わかるようになる。
例えばアンリはカレンに愛の言葉ばかり伝えていること・・・
いつもなら朝食を済ませて、アンリは外出するが、今日は彼はカレンの傍から動く気配はなかった。
「アンリ、今日はいかないの?」
「今日は休暇だ。カレンと一緒にいる○○○。このあと少し外出しようか?」
カレンは嬉しかった。
この国に来てからほとんど部屋とキッチンの往復で、外に出たことがなかった。
外の空気を吸うと言っても、バルコニーにでる程度だ。
「やったぁ!!」
思わず日本語ではしゃいでしまった。
アンリは優しく微笑んで小さく呟いた。
「○○喜んで○○○○、毎日休暇○○いいな」
こうしてカレンに新たな服がメイドたちに着せられる。
幾重にも重なったレースのドレスと繊細な刺繍が織り込まれたベール。
まるでマリーアントワネットだ。
「これ・・・」
身支度が終わって、アンリの前に姿を現すと、カレンは顔をしかめる。
(いくらなんでも私なんて似合わないよね)
カレン自身は容姿は特別に美人でも可愛いわけでもないと思っている。
さらに普段ドレスを着ないため、このドレスに負けてしまうと劣等感を感じていた。
アンリも顔をしかめた。
「そうだな…」
カレンはアンリの同意にホッとした。
普段蝶よ花よと扱われているが、この滑稽ともいえる姿に幻滅してくれたらと願った。
アンリは近くにいるメイドを呼ぶ。
「君、このドレスは胸元が○○○○!他の男にカレンの○○胸を見られて○○○!」
ところどころしか理解できないが、大体何を言おうとしているのかわかる。
アンリの同意はカレンの思っていた意味とは違うものだったようだ。
突っ込みたいことはあるが、言葉が思い浮かばない。
結果、ドレスの上にガウンを羽織るによってアンリは納得したようで蕩けそうな笑顔を浮かべる。
そして、いつものように「よく似合う」「可愛い」など愛の言葉を囁く。
アンリは軍服のようなシンプルな服装に身を包んでいるが、袖口は金糸の刺繍が装飾されていた
アンリのほうが何倍も素敵に思える。そんな彼がカレンを誉めちぎっている。
(この人、乱視じゃないかな)
言葉が通じてわかったこと
アンリはクールなキャラではないことだ
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.15 )
- 日時: 2014/12/06 22:38
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
予定は城下町を歩くようだ。
外に馬車が用意されているようなので、そちらを目指す。
今までは外にでるといっても、暇潰しでバルコニーから中庭をみる程度で、初めての外の世界にわくわくしていた。
慣れない靴で躓いてしまう。そしてたった数日間なのにまともに外出をしていなかったせいなのか体力が衰えたと感じた
「あ、ありがとう」
カレンは体を支えてくれたお礼をいう。
すぐにアンリが体を支えてくれなかったら、地面に激突していたことだろう。
「大丈夫?私の腕につかまって」
アンリは腕を差し出すが、カレンは首を横にふった。
「ありがとう、大丈夫。ゆっくりなら歩けるよ」
カレンは人に頼るのが苦手だ。自分でできることは人の手を借りずにやろうと決めていた。
再び歩き出そうとすると、アンリにふわりと抱き上げられてしまった。
アンリはニヤリと笑う
「腕に○○○○なら、こうして○○○○」
アンリはカレンの体を離そうとしない。腕を組まないならこの格好で中庭を歩くつもりだ。
そのとき、城の中を召使たちは歩いている召使と目が合ってしまった。召使は何も見なかったかのようにそのまま歩いて行った。
この格好は目立つ。いろいろな人に見られてしまう。
カレンは赤面して手足をバタバタ動かすが、アンリの腕はピクリとしない。最近食べる量が増えたようで、体力がついてきたらしい
最終手段で知っている単語で支離滅裂に叫んだ。
「わーっ!わかった!腕、腕にぃぃぃ!!」
カレンが降参に近いことを叫ぶと、アンリは下ろしてくれた。そして、ニコリと爽やかな笑顔で腕を差し出す。
どうやら彼は恋人のように腕を組んで歩きたかったらしい。
「姫、お手をどうぞ」
馬車に着くと、アンリはカレンに手を差し出す。
まるでおとぎ話のプリンセスになったようだ。
カレンは少し躊躇したが、待たせるのも悪いと思って、そっと手を添えた。
馬車の外面も豪華だが、内面も目を奪われるほど豪華だ。ソファがふかふかで体が沈む。
まるでこれからアンリに別世界へ連れていかれるようだった。
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.16 )
- 日時: 2014/12/07 23:30
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
馬車の中にはアンリの他に護衛が二人。
どれぐらい馬車を走らせたのだろう。窓から見える景色はまだ庭である。庭にお城のような建物がいくつか立っていた。
(どれだけ広いの、この家は!?)
アンリの住む城だけでも豪華だと思っていたのに、複数の城と広大な庭を所有しているようなのだ
もしかしたらアンリはカレンが考えているよりも身分が高いかもしれない。
城門をくぐると、窓のカーテンを閉められてしまった。
初めての城下町は人で賑わっていた。馬車の中でも賑やかさが伝わってくる。
カーテンを開けて窓から城下町の景色を眺めたかった。しかし、アンリはそれを許さなかった。
仕方なくカレンはレースのカーテン越しに城下町を眺めている。
外に出ると、改めて日本ではないどころか地球に存在しない場所であることを痛感する。
そもそもアンリがここまでカレンを大切に扱う理由がわからなかった。
召し使いとして扱うならあまり考え込まなくて済むが、明らかにメイドたちとは格段に扱いが違った。
(王子様が一目惚れするシンデレラストーリーとか…ないですよねー)
カレンは頭のなかに一瞬浮かんできた考えに自己嫌悪を覚える
アンリの熱い視線に気づかないほどカレンは鈍くはない。
しかし、カレンを好きにさせる要素がいくら考えても見つからない。
容姿は整っているわけでもない。性格も善人とは思っていない。
反対にアンリの長所はいくら並べても足りないぐらいたくさんある。
気紛れで毛色の変わった女と遊びたかっただけなのかもしれない。この愛情がいつまでも続くと保証できない。
カレンは家族が嫌いだ。常識の通じない父親と気持ちの通じない母親の間にしばしば争いがおきた。
カレン自信も両親から時々暴言や暴力を受けることもある。
しかし、家族の会話はあるし、一家でお出かけをすることもある。他の人からみれば【普通のいい家族】かもしれない。
だがカレンはどうしてもこの家族が好きになれなかった。
そのため、結婚にたいして前向きに考えられず、誰かと恋愛をしようとは思えなかった。
(私なんかよりももっと可愛くて素直な人だったら良かったのにね、ごめんね)
アンリの横顔を見て、カレンは心の中で謝罪した。
するとアンリはこちらを見て、「見惚れていたの?」と聞かれ、目を反らした。
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.17 )
- 日時: 2014/12/08 22:33
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
馬車は一軒の建物の前に到着する。そこでも再び手を差し出されて馬車を降りる。
護衛の人たちは後に続いた。
「ゆっくり歩こうか。欲しいものが〇〇〇〇、〇〇しないで私に言うんだよ」
カレンは遠慮してしまう。おねだりなんてハードルが高すぎる。
他人から物をもらうという行為が苦手であるためだ。
建前でアンリに「ありがとう」とだけ言った。
(絶対欲しいなんていわない!)
心の中で、カレンはそう誓っていた。
同年代の女子比べて格段に物欲はないと自信はある。そのためお洒落に興味はなく、日本にいるときはシャツにジーンズという出で立ちが多かった。
城下町の道は整備されていて、衛生的だった。
何もかもが珍しくて、カレンはキョロキョロしてしまう。すると、アンリは背後からカレンの肩をギュッと抱いた。
「他の男ばかりみてる。私には〇〇〇〇〇?」
嫉妬されている。公衆の面前で抱きつかれ、赤面してしまった。
「見てないよ!お店とか見てただけ!それにアンリ誰より格好いいもん」
冷静さを失い、思わず恥ずかしいことを言ってしまった。アンリの腕に力が込められたときにスイッチを入れてしまったに気づく。
時すでに遅し。
「本当に可愛いことを言う…。あなたはどれだけ〇〇〇〇〇〇〇〇」
「あの、早く行きましょう!護衛の人が待ってます!」
「もう少しこうさせてもらえないだろうか。護衛よりも私だけを意識してほしい」
こうなっては何を言っても無駄だと思い、カレンは心の中で悲鳴をあげた。
(普通、立場が逆だろう!?)
道行く人は必ず二人を見る。中には囃し立てるものもいた。
日本のようなスルースキルを期待してはならない。
護衛の人たちは武器をかざして囃し立てる彼らを威嚇していた。
(ご迷惑おかけしてまことに申し訳ありません…。もう少しで終わりますので)
カレンは彼らに謝罪の言葉を視線で送った。
そんな様子を知らないのかアンリはカレンの視線を護衛から外させるように振り向かせ、口付けをした。
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.18 )
- 日時: 2014/12/10 22:05
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
まずはたまたま目についた一軒の店に入った。
商品は全く店頭には置いていない。
「いらっしゃいませ」
愛想のよい店主が挨拶をする。
そのまま奥の部屋へ案内された。
部屋にはアンリの部屋とは比べ物にはならないが、豪華なテーブルと椅子がある。
椅子にすわると、お茶とお菓子を出された。
カレンは「ありがとう」とお礼をいい、お茶を飲む。アンリはお茶を口につけようとしなかった。
商品は奥の部屋にあった。
店主が商品をいくつか持ってきて、テーブルに並べる。
どうやら店員と客の対面式の商売らしい。日本と違って店頭に商品を置いていたら、万引きの危険があるのだろう。
キラキラとした宝石がついた装飾品がテーブルにいっぱいになった。
店主がカレンの視線に合わせてひとつひとつ説明していくが、ほとんど頭に入ってこなかった。
料理をするカレンには指環やブレスレットは邪魔にしかならなかった。
派手なネイルや指環をして料理をする学生を見ると、心の中で彼女たちの神経を疑うほどだ。
そもそもカレンはアクセサリーには興味がなかった。
豚に真珠。この言葉が思い浮かんだ。
他にも二軒回ったが、たくさんある服や装飾品に戸惑うばかりだった。
買って貰ったのはシンプルなラインの水色のドレスと、ドレスに合うとアンリに半ば強引に購入された星のモチーフの髪飾りの2つだった。
これなら、ドレスは料理をするとき動きやすそうだし、髪飾りも邪魔にはならないだろう。
もし、遠慮ばかりしてなにも買わなかったらアンリの男としてのメンツを潰してしまうだろう。
1つでも収穫があったことにカレンはホッとした。
早速買って貰ったゴールドの髪飾りを身につけて、店を出る。
「早速着けてくれて嬉しいよ。よく似合う」
アンリに誉めてくれた。
実はカレンもこの髪飾りを気に入っていた。料理をするとき、髪をまとめられるからだ。
そして、自分のために時間を割き、ドレスを購入してくれたことに何度も何度も感謝した。
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.19 )
- 日時: 2014/12/12 22:30
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
ふと、香ばしい臭いがカレンの鼻をくすぐる。お昼時の時間になったのだろうか。カレンの体内時計が働き、お腹が空いてしまう。
臭いの元はソーセージを焼いている店だった。ナンのような平たいパンに挟んでソースをかけて売っている。
「お腹すいた?」
店に視線が釘付けになっていたからだろう。アンリに気づかれてしまった。
カレンは苦笑する。
「ううん。まだ大丈夫だよ」
アンリは恐らく食欲がないのだろう。食べない者の前で食事をするのは気が引けた
すると、視線に気づいた店主に声をかけられた。
「お姉さん、これ美味しいよ!遠慮しないで恋人に買ってもらいなよ!」
恋人同士と見られて、カレンは硬直してしまう。その隙にアンリはさっさとパンを1つ購入してしまった。
広場のベンチに二人で座り、カレンはソーセージ入りのパンを食べる。
もちもちしたパンの食感と、焼きたてのソーセージの旨味が口いっぱいに広がった。
「美味しい」
「それは良かった」
カレンはアンリを見る。アンリは微笑んだままだ。
「どうしたの?そんなに可愛い顔して」
「アンリは食べないの?」
「私は・・・いいよ。夕食食べるから」
アンリはカレンが作ったものしかほとんど食べられない。なぜか理由がわからないが、シェフたちがカレンの真似をして作っても、口にいれようとしないのだ。
しかし、いつまで経ってもこのままでは困る。シェフたちも心を込めて料理を作っているのだから少しでも慣れて貰わないと困る。
「一口でもいいから食べなよ。おいしいよ?」
アンリにパンを見せつける。アンリは少し顔をしかめた。
無理強いはいけないとパンを引っ込めようとしたら、アンリはこう言った。
「カレンが○○してくれたら食べる。」
カレンは何を言われたかキョトンとした。アンリは指でカレンの唇を触り、次に自分の唇を触る
(要するに口移しか!)
今度は赤面してしまった。
一口でも食べさせてやりたいが、口移しはハードルが高すぎる。
戸惑っていると、条件をもう1つ出してくれた。
「あーん、でも構わない」
「ほんとに食べてくれるの?」
「ああ、約束は守る」
それならできる。
カレンはホッとした。
パンをアンリの口に持っていく
まるで餌付けしているような気分だ。
周囲にどう思われてもあまり気にしないことにした。
「アンリ、口にソースついてる」
思わず少し笑ってしまった。
可愛いところもある、と思った
アンリは「とって」と甘えてくる。
カレンは唇の近くについたソースを指で脱ぐって、自分の口にいれた。
- Re: 【第2章突入】Angel - Sweet side ( No.20 )
- 日時: 2014/12/13 22:17
- 名前: yesod ◆4xygyMHpNM (ID: ZKCYjob2)
広場から陽気な音楽が聞こえる。誰かが歌ったり踊ったりして、人を集めていた。
アンリによると、旅芸人らしい。少しの間だけ彼らの芸を見ていることにした。ファンタジーでよく見る光景にまさか自分がここにいるなんて思っていなかった。
(これ、いわゆるデートってやつじゃないの?)
カレンはアンリを見る。買い物をして食事をして・・・客観的に考えればデートだろう。
結婚に憧れはなくても、異性との交流は興味は決してないわけではない。
改めて意識すると、照れ臭くなってしまった。
躍りが終わった頃、二人はその場を離れることにした。
レンガ造りの建物を見上げると、屋根に白と茶色の模様のネコが日向ぼっこしているのが見えた。
「あ、ネコだ。可愛い」
ネコはカレンに見向きもせず、優雅な足取りで去ってしまった。
カレンはネコの姿を目で追っていると、アンリに話し掛けられた。
「ネコが好きなのか?」
「うん。ネコ好きだよ」
「そうか…」
アンリはネコが去っていった方向をじっと見る。
カレンはアンリの視線に嫌な予感がする。今までカレンが少しでも興味を示したら、購入しようとしていた。
もしかしたらネコを飼育しようか考えているかもしれない。
あわてて弁解する。
「いや、見てるだけでいいんだ!怖くてさぁ・・・」
人間の都合で動物を拘束するのは可哀想だと思っていた。動物は動物の世界で自然なままがいい。
「そうなのか。良かった…」
何が良かったのか、カレンは聞きそびれてしまった。
そのときのアンリが何を考えているのかも知るよしもない。
護衛の一人がアンリに声をかける。
「○○○、そろそろ・・・」
アンリは残念そうな顔をした
「もう時間か…惜しいな」
カレンも夕食の準備をしないと、と思った。アンリの手を握る。
「また今度一緒に行こう。今日は楽しかった、ありがとう」
すると、アンリは「カレンが可愛いことを言うから、余計に帰りたくなくなった。宿をとろう」と言い出した
その後、カレンと護衛たちは説得に苦労した・・・