複雑・ファジー小説

Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.1 )
日時: 2014/12/14 18:37
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

フレンチは美形だった。自他ともに認める美形だった。
幼い頃から女の子にモテ、男子には嫉妬され、授業参観日にはお母様方たちが、写メを取りまくる。しかし、彼はそんな日常がたまらなく嫌だった。

「こんな生活面白くないなぁ……」

帰宅途中、日頃の不満もあってかそんなことを呟いた。それが彼の運命を大きく変えることになるとは、彼自身まだ知らない。下を向いて歩いていたからだろうか、誰かにぶつかって尻餅をついてしまった。

「す、すみません、大丈夫ですか!?」

これが少女漫画なら、一目ぼれの展開になるだろうが、この作品の作者がそんな事を許すはずもなかった。
彼がぶつかったのは、燕尾服にシルクハットというどこからどうみても十九世紀の怪盗を彷彿とさせる外見の不審者だった。彼はフレンチを一目見るなり、言った。

「私の助手になりたまえ!」
「嫌ですね」

彼は得意の営業スマイルでそう返事をし、スタスタと帰り道を急ぐ。

「待ちたまえ、そこの性別不詳の子ども!」
「僕は男ですっ」
「男……フム、だが私からしたら、女の子にしか見えん」
「気安く話しかけないでくださいっ、何の助手かは分からないけど、僕はあなたの助手になるなんてまっぴらごめんですよ」

彼はその美しい髪をなびかせながら、ツンとした態度を取り、後ろを振り返らずに歩く。彼は普段は爽やかな笑顔の人あたりのいい美少年だが、本性は冷めており、かなりの毒舌家である。それを始めに知った人は彼を避けていくのが常であった。だから彼はこの紳士もそうだろうと思い、冷たく返したが、この紳士は強者だった。

「少年よ、きみが私の助手になるのは運命なのだ!」
「あー、はいはいそうですか」
「雪のように白い肌、血のように赤い唇を持った少年を助手にすると、三年前私は決めたのだ。きみこそ私の理想の助手……意地でも逃すわけにはいかん」

その声と共にフレンチの背後でガシャンガシャンと言う金属音が響いた。何事かと思い彼が後ろを振り返ると、そこには背中に十本の虫取り網を持ったロボットアームを装備した紳士がいた。

「覚悟するがいい、美少年君」
「ヒイィィッ!」