複雑・ファジー小説
- Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.101 )
- 日時: 2015/02/07 21:52
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
人にはそれぞれ与えられた役目があり、それを一生懸命こなす事によってご褒美が貰える時がある。そして彼もまたそのひとりであった。
「今日は店をお前に任せる、恥さらしの弟よ」
「そ、それは本当ですか兄さん!?」
カイザーのパン屋エデン支店。店長のパン職人、カイザー=ブレッドは義兄弟のトミーに一日だけ店を任せ、地球へ溺愛している妹的存在のハニーに会いに行く事にした。彼は故郷に帰ってからというもの、あまりにも経営するパン屋が忙しく妹に会えなくなっていたが、今日は彼女をを寂しがらせ続ける訳にはいかないと、弟に店を任せ、地球に行く事にしたのだ。
兄のカイザーは生真面目で義理人情を重んじる性格であるが、弟は金儲け第一で薄情かつ自己中心的な性格であった。
そして彼は、以前から兄の隙をついて店の乗っ取りを計画していたのであるが、それを実行に移すよりも早く、彼にとっては幸運な出来事が舞い込んできたのだ。
この願ってもないチャンスに彼は今にも踊りだしてもおかしくないほどに歓喜していたが、恐怖の兄の前なので踊るのはやめる事にした。彼は生唾をゴクリと飲み込み、ぎこちない作り笑いで、彼に言った。
「お店の事は私に任せて、兄さんは安心してハニーに会い行ってください」
「任せたぞ、恥さらしの弟よ」
カイザーが出かけたのを確認したトミーは、瞳を金の形に変化させ(アニメでよくあるアレと想像するとわかりやすい)、バレエを踊り出した。
「兄さんがついに店を開けました。そしてついに、私の壮大なカイザーのパン屋の乗っ取り計画が始まるのです……!」
ドォン!
轟音と共に、金髪を後ろに束ね碧眼の瞳を持ち筋肉隆々の屈強な体つきのカイザーは、博士の家の前に降り立った。彼が降りた場所には巨大なクレーターが形成されていたが、それを気にするような彼ではなかった。二メートル越えの巨体で彼は悠々と玄関まで歩いて行き、インターホンを鳴らす。応対に出たのは意外にも博士であった。彼はカイザーの巨体を見るなり口を開いた。
「きみが、ハニーちゃんのお兄ちゃんであるカイザー君かね?」
すると彼は深々と頭を下げ、
「はじめまして、カイザー=ブレッドです。あなたがハニーを養子にとり、育てていらっしゃるシナモン博士ですね。お会いできて光栄です」
「まあ、そんなにかしこまらないでくれたまえ。立ち話も大変だろうから中で話そう。ハニーちゃんもリビングにいるから、きっと喜ぶと思うよ」
彼が玄関のドアをくぐろうとすると、悲劇が起きた。あまりにも彼が巨体すぎるために、ドアの枠が壊れてしまったのだ。
「申し訳ない事をしてしまいました」
「いやいや、気にしないでくれたまえ。これはいつでも治す事ができるから」
「お心遣い、感謝いたします」
博士の家は高い吹き抜けの西洋建築になっており、玄関から入るとただっ広く真っ白な壁に覆われたリビングが現れる。普段博士達はそこでお茶をしたりしているのだ。この日も三時のお茶をしていたため、幸運な事にハニー達はリビングにいた。博士と一緒に入ってきたお客を見るなり、フレンチとハニーは嬉しさのあまり泣き出し、カイザーに抱き着いた。
カイザーはハニーだけでなく、スターレスリングジムの弟子達の頼れる兄貴分的な存在として強く慕われている。常に前線で悪党を殲滅しつつ、圧倒的カリスマ性でレスリングジムメンバーを束ねる偉大なリーダーであり、皆の尊敬を集めていた。クレーターに興味を示したヨハネスとアップルも博士の家にやって来た。
アップルは彼と初めて会うが、彼の活躍はヨハネスからよく聞かされおり、ヒーローのように憧れていたため、瞳をキラキラ輝かせて出会えた事を喜んだ。
そして博士の住む住宅街の中で彼の参謀役として彼の傍にいたヨハネスは、自分の頬をつねって夢でない事を確かめた後、普段は泣くことのない彼が声を上げて泣きだした。そして六人はイスに腰かけお茶を飲みながら、楽しく語り合う事にした。果たしてこれからどんな話が飛び出すのか。