複雑・ファジー小説

Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.102 )
日時: 2015/02/08 07:11
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

ハニーは今、最大の危機に見舞われていた。表面では笑顔を浮かべながらも内心はドキドキの状態が収まる事はなかった。
彼女の身に起きた最大のピンチ、それは——

『どうしよう、おならしちゃった!』

彼女は朝食の時間に大量のスイートポテトを食べたため、おならをしてしまったのだ。彼女は皆の話を聞きながら、心の中ではこんな事を考えていた。

『もしこれがバレてしまったら、みんなの中にある私の『可愛い女の子』のイメージが壊れちゃうよぉ』

彼女の瞳は匂いに人一倍敏感なヨハネスに向けられる。
彼の鼻は普段犬のように利くのだが、今日はカイザーが来ており、彼の話に夢中になっているため、匂いには気づいていないらしかった。それを確認した彼女は、小さくため息をつき、安心する。けれど、ヨハネス以外にも気づく可能性のある人物は他にもまだいる。その事に彼女は囚われ、落ち着けなくなってしまっていた。

「ハニーちゃん、どうかしたのかね?」

博士が不思議そうな声で訊ねたので、ここに来てようやく彼女はハッと我に返った。

「ううん。何でもないの♪」

普段よりほんの僅かだけ作り笑いを含めた笑みをして、博士の心配を吹き飛ばそうとする。彼は安心したのか、彼女から視線を離し、テーブルに置いてある煎餅に手を伸ばす。ここは便乗して彼女も煎餅を食べた方がいいと考え、煎餅を摘まむ。
彼女はパリパリと煎餅をかじりながらも、心の中の心配は拭えない。彼女はサッと周囲の人物を見渡した。現在彼女を除いてこの場にいる人物は、博士、フレンチ、ヨハネス、アップル、そしてカイザーの五人だ。次は一体誰が自分の事を疑ってくるのだろうかと考えたその時、彼女からぷうっという間の抜けた音がした。

『はわわ、またやっちゃった……もうお終いだよぉ!!』

彼女は今更ながらスイートポテトの食べ過ぎを激しく後悔したが、持ち前の前向きさと明るさで、半ばヤケ気味になり、ハニーはある種の悟りの境地に達した。

『こうなったら、とっても面白い話をして、みんなの注意をおならからそらせるしかないっ』

彼女はアホの子(天然で可愛い子)であったが、その分楽しい雰囲気を作るのに優れており、頭を一生懸命回転させて、メルヘンのお話を考えつく。
しかしながら、この時彼女の脳内で完成したお話は、おならをした妖精さんが、相手に濡れ衣を着せた挙句、最後にはそれがバレてひとりぼっちになってしまうという、今の彼女にはあんまりな話であった。

『マズい、マズいよ〜、コレ、完全に今の私の状況じゃない!なんとかして面白い話を考えて、みんなの意識を逸らさないと……』

あれこれ考えた挙句、彼女は口を開いた。

「あの、みんな実はね、ずっと言いたかった事があるんだけど……」

ハニーが話し始めたので、皆一斉に彼女の方へ体を向ける。彼女は自分に向けられる十の瞳に恐怖を感じていたが、勇気を振り絞って、こんな事を言った。

「私、剛力君と別れる事にしたのっ!」
「「ええっ!?」」