PR
複雑・ファジー小説
- Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.2 )
- 日時: 2014/12/14 18:39
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
少年は走った。無我夢中で走った。息を切らせ、汗を流しながらも、必死で走った。彼は足が遅い方ではない。けれど、早い方でもなかった。
しかし、背水の陣とはよく言ったものだ。彼にとって、これ以上ないほどの危機が己の中に眠る潜在能力を限界まで引き上げたのだ。後ろを振り向かず、流れ落ちる汗をぬぐうこともせず、白い頬を真紅に染めて、少年は安全圏である、我が家へと急いだ。体力も限界に達し、目は虚ろになり、もうダメかと諦めかけたその時、奇跡は起こった。少年の目の前に我が家が見えたのだ。彼は自分の全力を振り絞り、ありったけの力で家に突進しドアを開け、天敵が入ってこないようにカギをかけた。
『これでさすがの彼も諦めるだろう』
だが、彼のその考えは甘かった——
☆
翌日の土曜日。彼はいつもより遅く起きて、食卓に向かった。彼は母とのふたり暮らしだ。彼の父は、彼が五歳の頃に他界してしまった。しかし小さい頃であるし、彼はその時から周りの子より大人びていたのも手伝って、今となってはそれを既に受け入れていた。
「母さん、聞いてよ。昨日変な人が僕を追いかけてきたんだ——」
彼は昨日の帰宅途中に起きた出来事の一部始終を母親に話した。
すると彼女は笑って、
「面白い冗談を言う子ね。いつの間にユーモアのセンスが育ったのかしら」
「冗談じゃないよ、僕は本気だよ」
「あら、それはごめんなさいね」
彼女は口元を押さえ、必死で笑いを堪えている。それに耐えられなくなった彼は、無言で食卓を立ち、自室へと向かった。ベットの上に寝転がり、適当に本を読む。すると次第に睡魔が彼を襲い、彼はすやすやと眠ってしまった。この後、彼の目が飛び出るほど驚く事になるのはネタバレになるので、書かないでおくことにしよう。
PR