複雑・ファジー小説

Re: シナフレ ( No.30 )
日時: 2014/12/14 06:09
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

少年は闇に落ちた。深い深い闇に落ちた。

「ウフフフ、ウフフフ……ッ」

この世には闇落ちと呼ばれる現象がある。そしてここにも、闇落ちした少年がいた。フレンチは今、腰にタオルを巻いただけの裸同然の恰好でホテルを歩いている。当然、このことを博士は知らない。
フレンチは温泉に浸かっている時に、ヨハネスの鼻を明かすには、自分の容姿の美しさで勝負するしかないと悟ると同時に、この世は容姿こそが全てだと言う歪んだ思考になり、闇落(のぼせて)ちしてまったのだ。彼が歩くところ、老若男女問わず、鼻血の海ができた。彼の容姿のあまりの美しさに皆が見とれ、誰も彼を注意する事などできない。まさに今の彼は天使の顔をした悪魔と言う表現がこれ以上ないほどピッタリであった。

『ああ……みんなが美しい僕に見惚れて血の海に沈んでいく……なんていい気分なんだろう』

彼はすっかり自己陶酔してしまい、通路にある窓ガラスに映る自分の細身で華奢な容姿を見て、美しい微笑みを浮かべる。
彼は完全に悪魔に心を売ってしまったのだろうか。そして今、彼の凍てついた心を救えるのは、博士達三人しかいないのである。果たして彼らは闇落(のぼせた)ちフレンチを救う事ができるのか。