複雑・ファジー小説
- Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.54 )
- 日時: 2014/12/21 19:58
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
「アップル君、どうして泣いてるの?」
真っ先に口を開いたのはハニーだった。彼女にとっては彼の涙がクリスタルに変化した事などどうでもよく、ただ泣いている彼が可哀想で仕方がなかった。
彼はリンゴの刺繍のついたハンカチを取り出して目元を拭い、自分の周りに落ちたクリスタルを拾い上げ、右隣に座っているフレンチの掌に渡した。
「コレ、食事代だよ。僕はクリスタルパールの涙を流す事ができるんだ。だから、これで食事の料金を払ってもらおうかなと思って、泣いてたんだよ」
「そのために泣いてたの!? と言うよりきみ、ほんとに人間?」
フレンチの問いに、彼はいつものようにコクリと頷く。
フレンチが彼を半信半疑の瞳で見つめると、アップルはその澄み切った美しい瞳で彼を優しく見つめて口を開く。
「フレンチ君、実は昨日、ヨハネス君から聞いたんだけど、豚肉が嫌いってホント?」
「う、うん。そうですけど……」
「フレンチ君は、どうして豚肉が嫌いなの?」
「豚肉アレルギーですからね。豚を見るだけでゾッとして、嫌な気持ちになるんです」
「……それはすごく辛いだろうね。僕もチーズアレルギーだから、気持ちはよく分かるよ。そうだ、いい機会だから、ちょっと豚肉くんにきみの事をどう思っているのか聞いてみようかな」
彼はニコニコと微笑み、既に調理された存在であるトンカツに話しかけた。
「ねぇ豚肉くん、きみはフレンチ君の事をいつもどう思っているの?」
『彼、トンカツなんかに話しかけて、バカなんじゃないの?』
フレンチが心の中で毒を吐いたその刹那、信じられないほどの“奇跡”が起きた。
「そうだな、敢えて言わせてもらうなら、弱虫(チキン)野郎だな」
トンカツが載っている皿にデフォルメされた手足が生えてきて、そんな事を口走ったのだから、博士たちは全員三十センチほど飛び上がって驚いた。