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複雑・ファジー小説
- Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.65 )
- 日時: 2015/01/11 14:15
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
「悪人か……」
ドスの聞いた声で呟くのは、全身黒ずくめの軍服に身を包んだ中年男性だった。
彼、ジュバルツ=ブラックロー将軍は、子どもたちに人気の戦隊番組を、「渋すぎる」という理由で解雇された男だった。
「何という非情なものであろうか。私はヒーローの影になり、憎まれ役をずっと演じて来た。子どもたちからは罵声を浴びせられ、ヒーローに負け続け、最後に解雇か。事実は小説より奇なりとはよく言ったものだ」
彼はハラハラと男泣きに涙を流した。
「誰も私を応援してくれるものなどいない。なぜなら、私はヒーローの敵なのだから」
彼は着替えもせず、失意に満ちた心情の中、撮影所を飛び出し、何を考えるでもなく、憂いを帯びた表情でバスに乗った。明らかに異様な恰好の彼は、人の目を浴びたが、そんな事はどうでもよかった。彼が悲しみを秘めたバスの中で考えていた事、それは有名な癒しスポットに行って癒される事だけであった。
しかし、そんな彼の身に悲劇が起きた。
「なんと言うことだ、私としたことが寝過ごしてしまうとは……!」
彼は拳を握りしめ、悔しさを堪える。しかし、今更降りたところで癒しスポットにたどり着けない事を悟った彼は、再び腰を下ろし、窓に映る景色を眺めた。
しばらく眺めていると、田舎の住宅街が見えたので、彼は気まぐれとばかりそこに下車した。その選択が、彼の運命を大きく変える事になるとも知らずに。
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