複雑・ファジー小説

Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.8 )
日時: 2014/12/14 18:59
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

「ところで、きみの髪ってワカメみたいな髪型なんだね」
「さりげなく酷い事言わないでください。泣きますよ?」
「でも、軽くウェーブがかかっているところを見ると、私からしたらワカメのイメージが取り払えないなぁ」
「……ぐすっ」

フレンチはボロ泣き(ボロボロ涙を流して泣くこと)し始めた。それを眉を八の字にして眺めていたハニーだったが、博士の腕から離れると彼の傍に寄って行き、ぎゅっと優しく抱きしめた。

「フレンチ兄さん、大丈夫だよー?いい子、いい子」

はたから見ると、その光景は、幼児にあやされている頼りない兄に見える。しかし今の傷ついたフレンチにとって、優しく温かく柔らかい彼の抱擁ほどありがたいものはなかった。

『博士のハグよりずっといい……癒される——』
『羨ましいぞフレンチくん、次は私が彼のハグを受ける番だ!』

可愛い——それは、人を穏やかな気持ちにさせる大切なもの。
しかしながら、時としてそれが争いの原因になる場合もある。

「次は僕の番ですよっ」
「いいや、私の番だ!」

そして、ここでもまた、可愛いを巡る争いが起きていた——
博士とフレンチは、誰がハニーに癒されるかの順番でもめて、取っ組み合いの喧嘩をしている。遠目で見ると、大人である博士の方が断然有利と考える人がいるかもしれない。しかしフレンチは、その美しい顔と華奢で細身に体躯に似合わないほど喧嘩が強く、博士は苦戦している。これは単に博士が弱いだけなのでは?と疑問に思った読者の考えは、的を射ていると言えなくもない。
しかしながら、美少年のフレンチは、プロレスの天才でもあった。
彼はプロレスのメッカと言われるスターレスリングジムで一か月の特訓を受けて卒業し、おおよそ普通の子どもとは比べ物にならないほどの強さを身に着けていた。なぜ、格闘とは無縁の彼がプロレスジムなどに通うことになったのか。それは、彼の身の回りに寄ってくる、変態紳士たちを撃退するためである。彼は今、博士のマウントを奪い、拳を固めて殴っている。
続けざまに彼の体を反転させて、恐怖の技、キャメルクラッチを炸裂させた。この技は決まれば最悪、骨が折れる。とある漫画では体が真っ二つに裂ける。

「博士、ギブアップしますか?」
「……ギブアップ……」

彼がギブアップした事により勝者はフレンチに決まった。
完全敗北した博士は、胸の中でこんな事を考えていた。

『フフフフ、彼の強さの秘密はそのスターレスリングジムとやらにある。ならば私もそこへ行って体を鍛えようではないか!』