複雑・ファジー小説
- Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.96 )
- 日時: 2015/02/03 19:40
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
「ワシを覚えているかのぉ、シナモン博士」
フレンチと一緒にデパートで遊んできた帰り道、彼らふたりはある人物に出くわした。それは、見事にハゲた眩しい頭に、しかめっ面、両サイドにはねた白髪と小学生ぐらいの小柄かつ肥満体の老人であった。博士は彼を見るなり、真顔で答えた。
「いや、全く」
「酷くない!?」
老人は口をあんぐりと開けて驚愕するが、気を取り直して、鋭い目をギラリと光らせ、いかにも悪の科学者と言った風の邪悪な笑みで口を開いた
「ワシはお前に三年前、ビックリ発明ショーで敗北した、ハゲピカ=チビボテ博士じゃあああああああああっ」
名前を聞くなり、フレンチは腹を抱えて大笑い。
「笑うな若造ッ」
彼はフレンチに噛みついた後、白衣の背中部分からロボットアームを出現させ、彼の両頬をつねる。
「ひたたたたた……」
「どうだ、ワシの恐ろしさが分かったか!」
「なんてことをするんだ。フレンチ君のほっぺをつねるだなんて……」
「フハハハハハ、お前がワシを舐めてかかるから助手が痛い目に合うのだ」
「博士、このアームを外してくださいよぉ」
フレンチは瞳にうっすらと涙を浮かべて懇願する。
「よし、外してやるから一回ほっぺをつねらせてくれたまえ」
「なんでそうなるの!?」
フレンチはツッコミを入れたが、それを聞いているような博士ではもちろんなく、火事場の馬鹿力で彼の頬をつねっているアームを破壊し、彼の柔らかい頬をぷにぷにと引き伸ばし始めた。
「やっぱり美少年はもち肌だよねぇ〜」
彼はしばらくの間フレンチのほっぺを恍惚な表情で引き伸ばし続け、彼からビンタを食らう事でようやくつねるのをやめた。その様子をつまらなそうに眺めていたチビボテ博士であるが、ようやく本腰を入れて彼を人差し指でさした後、
「シナモン博士、ここであったが百年目……このワシと発明対決をしてもらおうか!」
「よかろう、チビボテ博士。その勝負受けて立とう!」
ふたりの博士は空中でバチバチと激しく火花を散らし、道の真ん中で突如として発明対決が開催されることになった。
「それではフレンチ君、後は頼んだよ」
彼はずいっとフレンチを前に押し出す。彼は困惑しながらも、博士に訊ねた。
「どうして僕が、あなたの代わりにあのおじいさんと発明で勝負しなければならないんですかっ」
「きみが闘った方がルックス的にもいいし、何よりこの小説の人気が上がるだろう?」
「作者が言いそうなセリフを言わないでくださいっ」
「すまないフレンチ君……」
そんなふたりのやり取りを見たチビボテ博士は、大口を開けて高らかに笑い声を上げると、
「お前が助手を使うと言うのなら、こちらも助手で対決するとしよう!」
彼が懐から取り出した何かのボタンのスイッチを押すと、驚くべき事に彼の目の前のコンクリートの床が左右に分かれ、ステージと共に何者かがせりあがってきた。
それは、茶色のクロワッサンを彷彿とさせる縦ロールに人懐っこい黒い瞳が特徴の男の娘にして、フレンチのライバルのクロワッサン天才職人少年でもある、クロワッサンだった。
「どうだ、シナモン博士。ワシは長い間説得して彼をワシの助手にする事に成功したのだ。実力は未知数だが、パン作りには奴にお前の助手は敵う訳がない!」
『確かに彼の言う通り、パン作りにかけては、彼の方が僕より一ケタも二ケタも上の実力者……相手があまりにも悪すぎるっ』
まじまじと現実を突きつけられたフレンチは、悔しそうに爪をギリッと噛む。
それを横目で見た博士は、
「赤ちゃんだった時の癖が抜けないでいるのかな。そういう所も可愛くていいね」
「余計なお世話ですっ」