複雑・ファジー小説
- Re: 変態紳士と美少年助手の愉快な毎日 ( No.97 )
- 日時: 2015/02/05 05:05
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
「マラソンと発明は何の関係もないのでは……?」
フレンチは小さくツッコミを入れつつも、更衣室に入り走りやすい恰好に着替える。体を軽くするため、ノースリーブに半ズボン、日射病予防のための帽子を目深に被って着替え終わり更衣室から出たその刹那、いきなり博士が抱き着いてきた。
「フレンチ君、肌の露出度が随分高い服を選んだね。これはつまり、きみは私に肌に触れてもいいよという許可を出したと言う事なのだよ!」
彼はフレンチを抱きしめながらも、彼の腕を触り始める。
「いい加減に離れてください、鬱陶しいっ」
彼を力づくでのけた後、対戦相手であるクロワッサンの服装を見た彼は驚愕した。それもそのはず、彼はフリルの付いた愛らしいゴスロリドレスという恰好だったのだから、フレンチが驚くのも無理もない話だった。
「まさかきみ、この恰好で走るつもりなんですか?」
「……(コクコク)」
こうして博士の鳴らしたホイッスルの合図と共に、障害物マラソンが始まった。コースは全長二十キロの一直線。曲がり角も何もなく、ただただ、真っ直ぐに走るだけだ。
『このコースは明らかに作者の手抜きですね……』
そんな事を思いながらも、彼とクロワッサンは全く互角の速力で走っている。
『おかしい。あのスピードに特化したクロワッサン君が、序盤とはいえ僕と同じなほど遅いはずがない。これは何か訳がある!』
互いに肩をぶつけ合い一歩も譲らない緊迫した(参加者は彼らだけなのではあるが)トップ争いが続いていたが、クロワッサンの速度に疑問を感じていたフレンチは、注意が散漫になっていたため転倒してしまった。
膝に少し擦り傷を負い、右目に涙を浮かべるももの痛みを堪えて立ちあがり、独走する彼を追いかける。その姿をオーロラビジョンで見ていた博士は、愛くるしさと健気ながんばりに、思わず涙を流した。その様子をチビボテ博士は邪悪な笑みを浮かべて見ていた。果たしてこの勝負、勝つのはどちらであろうか。
「フフフフ……シナモン博士、お前の助手はワシのクロワッサンに大敗するじゃろう」
「なぜそう思うのかね、チビボテ博士。勝負はまだ始まったばかりではないか。それにフレンチ君も追い上げてきて、次第に彼との距離を詰めていっている。互角の勝負になるのは時間の問題だろう」
「果たしてそうかな。ワシのクロワッサンは本気の十分の一も出しておらんぞ。何しろ総重量五十キロのゴスロリでパワーをセーブしているんじゃからな」
「!」
博士が驚きのあまり息を飲むと、彼は意地悪な表情で続ける。
「クロワッサンがあのゴスロリを外した時、それは奴が本気を出す時だけじゃ。じゃが、このマラソンでは本気を出すまでもなく、ひとり勝ちするじゃろうがなぁ」
「ハハハハハハハハハハ!きみは私の助手であるフレンチ君の底力を知らないようだね」
その声に何かを感じたチビボテ博士は、オーロラビジョンを見て目を見開いた。
なんと、フレンチは履いているシューズの靴底からローラーを出現させて、すいすいと地面を滑りながら優雅にクロワッサンを抜き去り、トップに躍り出た。
「見たかね、これが私の助手の力なのだよ」
「助手に様々な装備がされてあるシューズを履かせるとは、考えおったなシナモン博士。しかし、お前はこのマラソンが障害物マラソンである事を忘れているようじゃな」
五キロ地点に到着する彼らの前に現れたのは、なんと道を塞ぐほど巨大な二個のあんまんであった。
「コ、コレは一体……!?」
突然の巨大あんまんの登場に困惑し立ち尽くすフレンチに、チビボテ博士が設置されているスピーカーで答えた。
「それは第一の障害物、巨大あんまんじゃ!これを完食しないかぎり、先に進む事はできないようになっている。さぁ、どうするかね、シナモン博士の助手よ」
フレンチは早くも、チビボテ博士の用意した策略の前にピンチに陥ってしまった。