複雑・ファジー小説
- Re: レイヴン【更新速度低下】※随時調整 ( No.20 )
- 日時: 2014/12/28 09:25
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: vLFo5XnB)
弱々しくも、ショッピングモールのすぐ近くに隣接している人工島へ繋がる橋へとむけて歩を進めながら、刃は考える。
もしも、SSSランクが出現した、という報告が、一般の人々へむけて伝えられてしまったら、相等な混乱は覚悟したほうがいいのだろう。おそらくこれは、【レイヴン】だけが保有している情報で、政府は把握しきれていないんじゃないかと考える。
もしもこの情報が政府側に回っていたとすれば、人が集まるようなところの警備は強くなり、【レイヴン】としての出動要請も多くなっていたであろう。だが、そんなこともなく、ここ最近、今日のようなことを除けば、捜査にでるようなことはぜんぜんなかったといっても過言ではない。もしもそのような事態になっていたとしたら、たとえ末端の構成員である刃たちですらも、常に警備や見回りなどに駆り出される事態となっていただろう。そうなっていなかったのは、やはり、情報を【レイヴン】が隠しているからなのが大きいのだろう。
「この件はおそらく、【レイヴン】だけでカタをつけるつもりなんだろうな」
蓮は、その言葉に、同じ考えだったのだろうか頷く。
「おそらく……私たちが知らないだけで、【レイヴン】のエース級の人材は常に駆り出されていたはずです」
「それが巡り巡って奴が現れたのか……」
なんとなく、刃は最初に仮面の男が現れた時のことを思い出す。
まるで、なにかを知っているかのような口調だったことを明確に覚えている。『中途半端な【アビリティ】』という、刃へむけられた言葉がどういう意味をこめられていたのか、刃にはわからなかったが……
「あの【アビリティ】は……どうして、私たちの標的を奪っていったのでしょう」
刃がなにかを考え始めると同時に、蓮がふと思ったことを告げる。
「わからない。けど、最初から目的はあの【アビリティ】の男を連れ去ることだったようにも思えるな」
「モールの北エリアにはいったとき、刃兄さんはあの男と一度顔を合わせていたんですよね?」
刃が一度、仮面の男にたいして尋常ならざる恐怖を感じたとき、蓮はそれを目視していなかった。それは、たんに蓮が、刃の言葉にたいしてほうけていたからというだけではなく、仮面の男も男で、【レイヴン】がその場に存在することによって自らの目的を果たせないと踏んだから、警告の意を持って、刃へと声をかけ、そして自らの【力】を披露したのだろう。そのときは刃も突然のことすぎて、仮面の男が【アビリティ】であるという確信が持てずにいて、蓮も、緊張感が抜けていたために、目視することもままならなかった。
「今思えば……なんで奴は俺たちを最初の時に殺さなかったんだ?」
殺すどころか、奇妙な言葉を残すだけ。その行動になんの意味があったのか、疑問を口にしたところで刃にはわからなかった。
「実力を測りかねた……、戦闘になって騒ぎを起こして、標的に逃げられたくなかった……わかりません」
蓮が挙げた例はたしかにそれっぽい意図を組み込んではいるが、実際に拳を交えようとした刃からいわせてみれば、やつの実力は相当なもので、さきに二人を組み伏せたあとからでも逃げようとするあの男を捉えることなんて余裕だったのではと考えてしまい、どうにもしっくりとくるような回答ではなかった。