複雑・ファジー小説
- Re: レイヴン【一話執筆中】※随時調整 ( No.23 )
- 日時: 2015/01/05 23:15
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: B240tmf4)
【レイヴン】・対【アビリティ】第37部隊……東京エリアの【レイヴン】の部隊だけで50もあるそのなかのひとつで、そこだけは、かなり小規模で構成されていて、人は皆その部隊のことを、不満の意を込めて、こう呼んでいた。
変人部隊と。
【レイヴン】という組織は、そのエリア間を取り仕切る総司令官を頂上におき、そこから第一、第二部隊と別れ、そこにまた別の司令官を配置し、副司令官、オペレーターなどと、さまざまな役職を与えられる。
下に行けば下に行くほど【アビリティ】たちの実力が低い、というわけでもないが、特別、第一から第五までは強力な【アビリティ】たちを配置していて、上に行けば上に行くほど【アビリティ】に対する考え方がお堅い人間ばかりなのも間違いではなかった。
そして、小規模な構成の第37部隊は、【アビリティ】に対する差別意識がない、または低い人が所属し、また、変わった性格をしていて、普段いるときは邪魔でしかないが、優勝であるがゆえに切り捨てることもできずにその部隊へと追いやられる。その筆頭である新城結衣は平気で上の命令を無視し、自分の思うがままに振る舞い、それにつられるほかの人たちも自由気ままな人間しかいないというまさに問題だらけの部隊だった。
そこに所属している【アビリティ】は2ペアのみという非常に少ない部隊であり、そのどちらもが実力てきに秀でる部分はなく、平凡とすらいえるほどではあるが、そのどちらもが、特殊な事例であるがゆえに、その部隊に押し付けられる形となっていた。
本部へと帰還し、総司令官室へと実際は向かわなければならないところを、刃は、結衣と蓮に抱えられながらなんとか医務室までたどり着き、軽い治療を終えた後にベッドに横たわっていた。
「あの刃くんがここまでダメージ負うなんてね〜」
ベッドの横にたち、刃が身体に負ったダメージを記録しながら、やわらかい口調でしゃべるのは、二十代半ばの37部隊お抱えの看護師、稲生千璃だった。
茶色く明るい紙は緩やかなウェーブをえがいていて、背中あたりまでのびている。目鼻立ちは整っているが、なぜかおっとりとしている、という雰囲気を感じ取れてしまう。身長は蓮や結衣よりも大きく、体型も大人びていて、刃は思わずナース服に包まれるその胸部に目がいってしまい、口元が緩んでしまう。
「身体だけは丈夫なのにね〜」
しかしやはり37部隊に所属しているだけあり、変人であることにはかわりないのが傷だった。
マイペースすぎて厄介……というのは、まさにこの人のことを指すんだろうと刃は心の中で納得していた。
「刃兄さん、どこ見ているんですか」
蓮の若干拗ねたような口調に我に帰った刃は、わざとらしい咳を何度かした。
「あらあら……刃くんはえっちね〜」
自分のペースを崩すことなくニコニコしながらそんなことを千璃はいう。気づいてたのかよと若干の気恥ずかしさから刃は軽く舌打ちする。
「でもさすが刃くん。肋骨2本に罅がはいってるのと、あと打撲程度ですんでるね〜。はい、これ渡しとくね」
刃のダメージの部位を記録したカルテを、そばで待機していた結衣に手渡すと、あくびしながら千璃は病室から退室していく。それを片目で結衣が見たあと、そのカルテに目を通しながら
「キミじゃなかったらおそらく圧死していただろう」
と、不穏なことを口走った。
刃のように、身体能力が強化されるようなケースの【アビリティ】は、その身体能力についていけるように、骨や筋肉までもが強化されるのは言うまでもないだろう。それを一種の【力】、という説を唱える者もいるが、ただの副産物にすぎず、また、【力】と呼ぶにはあまりにも弱々しいものであることも間違いはなかった。
「まあキミの身体のダメージなんて私にはどうでもいい。それよりも、刃、キミは今回の事件も『また』、【力】を使わなかったね?」
その結衣の言葉に刃は舌打ちする。
そう、刃は【力】を使っていなかった。ただ、自身の強化された身体のみで【アビリティ】の男を排除するべく、戦闘にはいっていた。仮面の男がでてくるまでは、それだけでも刃は、【アビリティ】の男を圧倒できるぐらいには追い詰めていたし、戦闘面にかんしてはなにも問題がない。だが
「べつにキミがなにを思って【力】を使わないのかは知らないし今回に始まったことではないから私も言及しないが……、イレギュラーが発生したときにも【力】を使わなかったのは、キミの判断ミスだ」
「わるかったよ」
「その結果私の蓮チャンまで危ない目にあってたらどう責任をとって……いや、まあいい」
真面目な話かと思いきや突然いつもの調子にもどった結衣をみて、刃と、蓮は胸をなで下ろす。
「まあ、刃が特別な【アビリティ】であるがゆえにそのデータを求められている、ということだけは知っておいて欲しい。ま、私はべつに気にしないけどな」
「ああ……」
「それよりも、SSSの話をしよう」