複雑・ファジー小説

Re: レイヴン【キャラクターイラスト公開】※随時調整 ( No.25 )
日時: 2015/01/07 18:11
名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: B240tmf4)

結衣が話を切り替えるかのように、カルテをベッドに放りなげて、もっていたカバンのなかから数枚の資料をとりだし、それを蓮に渡す。

「新城。お前が知ってるSSSの情報をさきに話してくれ」

そうでないといろいろ納得できない点がある、と刃は考えていたがゆえの発言で、結衣もそれに頷く。

「電話でも話したと思うが、SSS判定がでたのはほんの数ヶ月前……だいたい三ヶ月程度の話だ。キミたちは当然しらないと思うが、それによる全国の総司令官会議が行われた」

「SSSが出現したとなれば、たしかに開催されていそうですね」

「その結果、SSSは全国指名手配となったが……なぜか上は、これを一般には報道しないという選択をした」

刃は、その言葉に間髪いれずにいう。

「それが納得できねえ。たしかにSSSの出現が知れれば混乱するかもしれないけど、何も知らずにSSSの起こす災害に巻き込まれるよりはましなんじゃねえのか?」

結衣は刃の言葉に頷く。

「たしかに私もそう思った。けど総司令官同士の話あいできまったことに私は口出しできるほどの人間ではないから、その決定に従うことにした」

「ではなぜ、私たちには黙っていたのですか?」

蓮の疑問に答えるように、結衣がいう

「それも上の決定だね。全国の【レイヴン】組織の各エリアごとの選りすぐりの【アビリティ】ペアにはSSSの捜索と抹殺任務がすでにだされていて、この三ヶ月はその任務にしか就いていないらしい。けど、各部隊の司令官にはこのことを【アビリティ】に伝えるのは自由と言われているが、捜索および抹殺任務はだされることはないから、必要でないかぎりは情報漏洩を防ぐために黙秘せよといわれている。キミたちに言わなかったのは、珍しく私が素直にその命令にしたがったからだけど……」

そこで、一度結衣は立ち上がり

「私の判断ミスでキミたちにSSSの存在を明かさず、危険に晒し、刃には傷までおわせてしまって、本当にごめんなさい」

と深々と頭をさげ謝罪の言葉を口にする。

その言葉をきいてしまうと、二人は何も言えなくなってしまう。普段あまり、人に謝罪などせず、唯我独尊のような態度をとっている結衣が、謝罪するということは、それほどに重い事情があるということを意味していたから。

唯我独尊であろうがなかろうが上の決定には従うしかない。今回のようにわがままを押し通すこともあるが、それは東京エリアでのみの話であり、この話は、全国クラスの決定事項であるがゆえに結衣には従うことしかできないのだ。

それがわかったからこそ、刃たちは黙り込んでしまう。

だがしかし、その一方で、刃は別のことを考え始めた。

この話にはいろいろと不自然な点が多いということが、結衣の話ぶりからなんとなく察することができてしまった。それは、蓮も同じなのか、刃へとアイコンタクトを送ってきていて、どうしたものかと刃も考え込む。

まずはじめに、なぜ、末端の構成員には極力知らせるな、という命令をだしたのかがわからなかった。たしかに情報漏洩をふせぐため、という理由はわかるが、はたして、【アビリティ】である刃たちにおしえたところで、流すような相手がいるはずがないのはわかりきっていることのはずで、その心配はまったく無用であるといっても過言じゃない。

次に、末端の構成員には抹殺指令をくださない、という点もおかしいと刃は思った。このことをあらかじめ末端の構成員でもなんでも知らせておけば、もしも遭遇したさいに現場の近くにいるほかの【アビリティ】たちを集結させたり、【レイヴン】から直接でむいたりして敵を数で押し切ることも可能なのではないか、と刃は考える。SSSであるがゆえにそれは無謀であることはわかるが、もしもトップクラスの【アビリティ】が出向いてくれば、それも可能なのではないかと。

そして……最後に、なぜ、仮面の男は、三ヶ月前にSSS判定がくだされたのか、という疑問は、もって当たり前のものといってもいいだろう。
前二つのことはそれなりの事情があるから、といわれてしまえば納得せざるを得ないのだが、最後の一つは、事前情報としては最も知っておきたい部類のひとつだった。