複雑・ファジー小説
- Re: レイヴン【一話執筆中】※随時調整 ( No.26 )
- 日時: 2015/01/09 00:06
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: UHIG/SsP)
「私が知っているSSSの情報は容姿、【力】の詳細、そして犯罪歴ぐらいだけど、容姿はキミたちもみたからわかるね?」
結衣は、そんな疑問を抱く二人に気がついたのかそうでないのかわからないが、話をもとにもどしていく。
「無表情の仮面に黒いマントを全身に巻いたいかにもって見た目だよな」
刃は、モール内でみた仮面の男の姿を思い浮かべながらそう言う。その答えに満足したのか結衣は一度頷くと
「【力】のこともある程度はわかるね?」
「空間操作能力ですね」
「蓮ちゃん正解。空間操作能力……簡単に言えば瞬間移動、空間転移……能力差はあるがある程度の距離を瞬間的に移動できる便利な能力だね」
結衣は一度、刃のほうをみる。
「それは一番君がわかってるね、刃」
「ああ」
空間操作能力、それは、まさに刃がもつ【力】のそれと、まったく一緒の【力】だった。
それゆえに刃は再び疑問がうかぶ。
「まてよ新城……空間操作能力はたしかに便利な【力】だけどよ、強力な【力】ってわけでもねえぞ」
盲点だったと思うほどに、刃はそのことに気が付いていなかった。
空間操作能力。名前はたしかに大層なものであるが、その実態はただの瞬間移動できるだけの【力】だ。
たしかに、対人戦や、犯罪に使おうものなら脅威にはなるのは間違いないだろう。縦横無尽に駆け巡り、ありとあらゆる障壁を無視して転移するこの【力】は、人間社会にとってはもっとも恐ろしい【力】であるといえるだろう。
だがしかし、それが【アビリティ】同士の戦闘でなら話は別だった。
瞬間移動なんていうものは使えど使えど相手を傷つけることはできない。ただただ自身の体力を消耗して場所を移動するだけ。単純な戦闘ではなんの価値もない。ただただ逃げるのに適した【力】だ。そんな【力】だけで、SSSの判定をもらえるというのならば、刃もとっくのとうに【レイヴン】トップクラスの【アビリティ】の称号をもらえていることだろう。だが、そうなっていないのはやはり、その【力】は戦闘向けではないからだ。
刃や仮面の男のように、身体能力も向上しているような【アビリティ】であるのならば、たしかに戦闘面でその【力】をつかいこなしつつ体術を混ぜ込みながら戦うと真価を発揮しそうなものだが、そんな例は特殊も特殊すぎて例え話にもならない。
だからこそ、刃は不思議でならなかった。なぜ、そんな能力だけで仮面の男が【レイヴン】からSSSの判定をうけ、全国指名手配者になりながらも、三ヶ月も逃げ延びているのかが、不思議でしかたがなくなってしまった。
その疑問にたいする答えを持ち合わせていないのか、結衣も困ったような顔をする。結衣もその点にかんしては盲点だったらしく、この疑問はこれ以上解決しないことを意図していた。
「それだけでSSS判定がでたというのは考えにくいですね……でも刃兄さんと同じような力をもってるなら、頷けなくもない話です」
蓮の言葉は、身体能力が向上している特殊事例をさしたものだったが、それだけではたりないのは刃が一番わかっていた。
いくら身体能力が向上していたとして、いくら戦いに長けていたとしても、限界はかならず訪れる。その限界を【レイヴン】が見逃すはずもない。