複雑・ファジー小説
- Re: レイヴン【一話執筆中】※随時調整 ( No.27 )
- 日時: 2015/01/20 08:05
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: kniACxiR)
「一応そのことは私が上に掛け合って直接話をきいておくよ」
これ以上話をしていても答えがでないとわかった結衣が話を一度きる。刃たちもこれ以上考えたところでなにもわからないと理解していたために、次の質問をする。
「じゃあ奴の犯罪歴ってのはどうなんだ?」
それは、SSSの判定に繋がる話なのではないかと考えた刃が切り出す。だが、帰ってきた答えはあまりに刃が求める答えとはかけ離れていた。
「犯罪歴は……一般人や社会的に犯罪を犯した経歴は一切不明、だよ」
蓮が驚きに目を見開くのが伝わってきた。
別段、珍しいことでもない。【アビリティ】となったからといって、犯罪に走らずに過ごしているものだっていることぐらい、【レイヴン】であれば誰もが知っている常識だ。だが、問題なのは、これがSSS判定がくだされたあの男の犯罪歴だということだ。
わけがわからず刃は頭を一度かく。思わずたばこがどこかにないかさがしてみるが病室のなかにあるはずもないのであきらめ、一度考える。
一般人……社会的……それは簡単にいってしまえば、人間社会のルールを犯すようなことは一切していないということだ。していない、という言葉には語弊があるかもしれないが、バレるようなヘマはやらかしていない、といったほうが正しいかも知れない。
だとすれば、なぜ、【レイヴン】は仮面の男をSSSと判定する必要があったのだろうか。たかだか空間操作能力程度でそこまで評価があがるとはとてもおもえないし、ほかになにか隠されているとしたら……その時刃は、モールの中で仮面の男がとった行動を思い出す。
最初は、偶然その場に居合わせただけかと思っていた。だが、偶然にしては出来すぎているような気がして、刃は改めて思考を巡らせる。
とえば、【レイヴン】にのみ伝わっていた情報、【アビリティ】がモールの中に潜伏しているという情報を、仮面の男があらかじめ知っていたとして、刃たちと同じく、あの場所でその男を探していたとしよう。
そうすると、刃たちと鉢合わせになり、戦闘になるのもおかしくはない。問題は、最初になぜ刃に近づいたのか、という点だが、そのあたりは今は気にしなくてもいいだろう。
戦闘中。やつはなにをしていたか。刃が止めを刺そうとする【アビリティ】の男を庇うかのようにして現れ、そして……その男を、まるでさらうかのように、持ち去ってしまった。
そして、やつはなんと言っていたのか。こう、言ってはいなかっただろうか。
(この男はもらっていくよ)
と。
そこで刃はハッとして結衣のほうをみる。
「まさかやつは……」
刃がいいかけたそのセリフの続きを、結衣が代弁するかのように口にする。
「そう、キミが今思っているとおり…やつは、【レイヴン】の標的を奪う」
その言葉に合点がいったのか、今まで黙って話の流れを聞いていた蓮が口を挟む
「もしかすると、SSSはなにか組織的な動きをしようとしているんじゃないですか?」
「それは……わからないんだよ蓮ちゃん。奴がどういった目的で標的を奪っていくのか。その奪った標的はどうなったのか、【レイヴン】はまだその全貌すらも掴めていないんだ」
仮面の男の謎は、結衣から話を効く以前よりも深まるだけだった。
結果的に言えば、たしかに仮面の男の表面はしれたかもしれないが、その男がなにを考えていて、どんな【力】をもっていて、どれほどの実力を持ち得ているのか、それすら、【レイヴン】は曖昧にしか仮面の男のことを認識できていないようだった。
そこからうかぶのは、やはり、どうしてSSS判定がくだされたのか、ということだ。
結衣の話ぶりから感じ取るに、【レイヴン】は仮面の男の実態を掴めていない。そのはずなのに、仮面の男にはSSS判定がくだされ、全国の【レイヴン】の【アビリティ】が躍起になって探していて、そして、やつはその包囲網からも逃げおおせていて……話をまとめようとすると情報がこんがらがってきて、わけがわからなくなったのか、刃は頭を一度かくと、舌打ちして、考えることをやめた。