複雑・ファジー小説

Re: レイヴン【参照500突破・ありがとうございます】 ( No.30 )
日時: 2015/02/03 09:30
名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: n./ST4vL)

気になるのはやはり、あの仮面の男だった。

あの男は、いったいどういったタイプの【アビリティ】なのか、どういった理由で野良【アビリティ】をさらうのか……まったくもって理解できない。

あれから一週間たつが、何度頭のなかで考えても、何度話あっても、その答えは分からずじまい。そのことに苛立ちながらも、探ると決めた以上、ひたすらに考え続ける。

いままで話あった結果、仮面の男が【アビリティ】をさらうもっともらしい理由は、ひとつに絞られているが、それが答えなのかはやはりわからないが、その答えだった場合、かなり危険だといえる。それは、【アビリティ】をあつめ、【レイヴン】に対抗しうる組織を作ること。

これまでに37部隊であつめた、仮面の男の情報……それは、だいたいほかの部隊が野良【アビリティ】と戦闘中に介入してきた仮面の男や、標的をロストしたさいに仮面の男をみた、という、目撃情報だけだったが、そのどの部隊が捜査していた野良【アビリティ】の危険度はAランク以上。そのなかには、危険度Sランクの【アビリティ】が標的だったものもある。つよい、または危険な【アビリティ】ばかりをさらい、そして、どこかでその【アビリティ】たちと結託してなにかをたくらんでいる……というのが、一週間考えて導き出したひとつの可能性だ。
眠気に囚われる頭で考えても仕方ないといわんばかりに刃はタバコをふかす。

そこでふと、37部隊のもう一つのペア……一週間前から別の捜査で外にでている【アビリティ】たちを思い出す。

仮面の男に関することは連絡をすましていて、もしも出現した場合戦闘にはいる前に離脱せよ、と結衣が命令を下していたが、まだ標的をみつけてないのかと若干その無能さに呆れながら

「使えないやつらだ」

とため息をつく。
そんなことを考えていると、ちょうど寮……東京エリアにある、【アビリティ】の寮が並ぶエリアへとはいったのか、出入りする【アビリティ】たちの姿がはっきりと見えるようになってくる。そこで、見慣れた男女のペアが刃のいる方向・・・基地のあるほうへとむかって歩いてきているのがわかった。
一人が中肉中背の、金髪を逆立て、それに似合わない少年のような顔立ちをした男で、刃と同じスーツ姿を着崩している。もうひとりのほうが、前髪を揃えるように整えていて、後ろ髪は腰ほどまである黒髪の持ち主で、弱気な瞳と、蓮と同じように小柄な体型をしていて、どこか人形を思い立たせる少女で、その少女も、蓮と同じようなスーツに身を包んでいるが小柄なせいかやはりあまりにあっていない。

その二人に刃は見覚えがあり、ついさきほどまで使えない奴らだと罵ったばかりの、第37部隊の仲間だった。

なにか話ていたらしく、いまこちらに気がついたと言わんばかりに男のほうが刃へと手を振る。刃はタバコを地面に放り捨て、靴で火を消し舌打ちをする。とっとと帰って寝たい刃にとっては、いまもっとも相手にしたくない相手……結衣の次に会いたくない奴らであった。