複雑・ファジー小説

Re: レイヴン【参照500突破・ありがとうございます】 ( No.33 )
日時: 2015/02/05 15:47
名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: n./ST4vL)








一方、刃のいないところで話は急激な展開を迎えることとなる。

いつものように当たり前といったふうな顔で37部隊のオペレーションルームの隣、割り当てられた部署の中で、ヘラヘラと笑い、まったくもって反省の色を示さない勇気と、その隣で、勇気に付き添っているばかりにいつも泣きそうになりながら謝る美波のことを自身の椅子に座りながら、結衣は尋ねる。

「今回のターゲット……氷の【アビリティ】の捜査、なぜ1週間もかかったの?」

結衣は、申し訳なさがいっぱいでとても話を聞けそうな状態じゃない美波ではなく、勇気に対してそう尋ねる。今回、この二人に与えた任務は、危険度Aの、刃たちに与えた任務とほぼ同等の難易度で、潜伏先も、似たようなショッピングモールだったはずだ。

それなのに、どうしてこの二人はそこまで時間がかかったのか、それがすこし疑問だった。

たしかに、勇気のような馬鹿と、美波のように消極的な人間が揃うと、捜査が難航することも理解しているが、それでもいままでで最高は3日だった。それがなぜ、さほど危険度が高いわけでもない今回の捜査で、ここまで時間がかかったのか、そこにもしかしたら、仮面の男がからんでいるのではないかと、結衣は考える。

勇気は、待っていましたと言わんばかりに柏手でをうち、今までのアホ面がどこへいったのやら、すこし真剣な顔になる。二年前までは真面目な話をする時ですら馬鹿な顔をしていたが、この二年で成長したもんだなと結衣はおもいつつも勇気の言葉をうかがう。

「結衣っちは、おれたちが捜査をしている時に、例のアレ……仮面の男について連絡をくれたよな?」

「ああ」

結衣の肯定を聞き、勇気がすこし考える素振りをする。これは言ってもいい情報なのか、そうでない余計なものなのかと考えている様子だったので、結衣は、先を促すようにいう。

「とりあえず、今回の操作中に起こったことを洗いざらい話てくれればいいよ」

勇気が考え始めると先が見えなくなるので、そういう。その言葉を聞いた勇気が、なにかを決心したかのようにいう。

「実はさ、その連絡がくるすこし前ぐらいに、おれたちは標的をみつけてた」

「……なんだって?」

結衣はそこに疑問を浮かべる。

たしかに、仮面の男を捜索するにあたって、なんでもいいから情報がほしく、勇気たちにも連絡をいれた。だが、その連絡をいれたのは一週間も前の話だ。だが、勇気たちはすでに、標的を見つけていたという。そうすると、なぜ勇気たちは一週間も、その【アビリティ】をほうっておいたのか。

「まさかまたサボっていたんじゃないだろうね?」

勇気がいくらバカだとはいえ、大事な任務中にさぼりはしないことを重々承知しているが、普段の彼を見ているとそう考えてしまう。だが、勇気は首をふると。

「おれだって標的をいつまでも野放しにしておくほど馬鹿じゃないよ。でも、いざ戦おうって前に連絡があったからさ、バカなりに考えたんだよ」

自分のことを馬鹿だと認識しているのかそうでないのかはわからないが、勇気はそういう。すると、いままで話を聞ける状態じゃないと思っていた美波が口をはさむ。

「もし……その【アビリティ】を、放置していたら……みんなが探してる、仮面の男っていう人がでてくるんじゃないかって思って……」

「そうなのよ。んで、おれは、美波ちゃんの提案で、標的をみはろうってことになったのよ」

「いい判断だね美波ちゃん」

結衣はつい、真面目な話をしているにも関わらず、蓮と同様に可愛がっている美波がいい働きをしたことがうれしくて、ついつい抱き寄せて頭をなでてしまう。