複雑・ファジー小説
- Re: レイヴン【参照500突破・ありがとうございます】 ( No.34 )
- 日時: 2015/02/12 10:43
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: zsSJTM.k)
「やっぱり美波ちゃんは私が見込んだ女の子だね」
「わ、わわわっ」
美波は結衣のスキンシップにいつまでもなれないのか新鮮な反応をしめす。それがかわいくてついつい結衣も真面目な話を忘れて猫可愛がりしてしまう。それをみかねた勇気がひとつ咳払いをすると、結衣も我に帰ったのか、美波をはなし
「続けて」
と、すこし恥ずかしげに言う。
「結果だけいうと、仮面の男は『現れた』」
「そっちでも出現していたか……まさか、戦っていないだろうな?」
結衣は、勇気たちがおっていた【アビリティ】のほうにも仮面の男が出現していた事実をしり、すこし驚いたが、やはりか、という気持ちのほうが強かった。そのうえで、勇気が感情まかせで仮面の男と戦っていないかを尋ねる。ここ最近はオペレーションルームで情報をさぐることに専念していたせいで、首輪につけられているカメラから流れる情報、勇気たち【レイヴン】の【アビリティ】が【力】をつかったさいにながれはじめるその映像をみていなかったため、かくにんがとれていなかったのだ。
勇気は、その質問に首をふる。
「ないない。刃くんが勝てなかった相手に俺が勝てるわけないっしょ。ま、美波と二人がかりでならなんとかなったかもしれないけど……」
そこで勇気が苦い顔をする。その時の状況を正確に思い出しているのか、その顔はだんだんと怒りに変貌しいていく。
「またひとり【アビリティ】がやつの元にいったことになるのか……。やはり、やつがやっている行動は【アビリティ】の組織化なのか……?」
結衣が独り言のように、仮面の男がとっている行動はなににつながっているのかと考える。いまあつまっている情報でもっとも可能性が高いのは、やはり、蓮が最初に言った【アビリティ】の組織化だ。それはなにに対抗するための組織なのか、なんの目的をもつ組織なのかはわからないが、それがいま一番しっくりくる答えだった。
野良【アビリティ】同士が手を組んで組織を作り上げた場合、ロクなことがない。過去にも同じように、小規模な【アビリティ】の集団が【レイヴン】へ攻撃をしかけたり、大規模な犯罪を犯したりと、さまざまなことがあったらしいが、ここ最近は【レイヴン】に所属している【アビリティ】の能力が向上してきていて、そのような大規模犯罪など、【アビリティ】の小規模な組織などはなりをひそめてしまっているらしい。
そこであらわれたのが仮面の男……やつは、単体でSSSを叩き出すほどの驚異的な能力を秘めている可能性が高く、また、【レイヴン】が拘束、または処理するはずだった危険度A以上の能力をもっている【アビリティ】をつれさることから、もしも徒党を組んで【レイヴン】へ、または社会へ攻撃を始めたら、東京エリアにいる【アビリティ】たちだけではどうしようもなくなってしまう可能性がたかい。もしもこれ以上仮面の男を野放しにしていたら、さらに状況が悪くなってしまう可能性がある。
そこまで考えたところで結衣は、自分たちが、過去二度あった、SSSの出現の際に起こった大波乱の、それ以上危険な存在に足を突っ込んでいってしまっているのではないかと、表情をなくす。だが、そこで勇気が、結衣の考えを全否定するような言葉を発する。
「いや、結衣っち、ちがう、ちがうんだよ」
その言葉に、怪訝な顔をする結衣。
勇気は、美波と一度顔を合わせると、その時、仮面の男と標的が相対した時に起こった出来事を完結に、そして、これ以上ないほどにわかりやすく説明し、再び結衣の頭を、そして、いままで答えだと思っていたものが一気に遠くなってしまうような、そんなことを、言う。
「仮面の男は———おれたちの標的を殺した」