複雑・ファジー小説

Re: レイヴン【第二話・仮面の表】 ( No.39 )
日時: 2015/02/14 18:10
名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: zsSJTM.k)

————









「君は本当に愚鈍で愚図で使えない男だね。刃」

「うるせぇ」

刃が寮でサボっているのが結衣にバレ、基地へと連れ戻されたあと、唐突に罵倒から始まった。

だいたい六時間ぐらい眠ったためにだいぶ身体の調子がよくなっても、寝起きに結衣の罵倒を聞くのはだいぶストレスなので、はやくも舌打ちしそうになりながら必死に刃はこらえていた。

「蓮ちゃんを見習いたまえ、連日の情報あつめを必死に手伝っているというのに、君は蓮ちゃんを放っておいてひとりでさぼっていたのか」

「わ、私はべつに大丈夫ですよ」

「蓮ちゃんはこうはいうがね、君よりも何百倍も私の部隊の助けになっているんだ。君も見習ったらどうなの」

「チッ……」

ついにこらえきれなくなり舌打ちをする。

けど、やはりというか、容赦なく結衣は、刃の腹に拳をたたきこみ、刃は咳き込む。

「まあいい。君がそういうやつだからこそこの部隊にいるんだからね」

「わるかったって」

「とりあえず、蓮ちゃんは今日はもう寮で休んでいていいよ。刃にたのみたい仕事があるから」

結衣の申し出に、蓮はなぜかそわそわとしだして

「私も、刃兄さんを手伝ってはダメですか?」

という。

仕事の内容がどんなことであるにしろ、働き詰めの蓮にはできない仕事なのだろう。ひとりで勝手にさぼってしまったもうしわけなさから、刃は蓮の肩にてをおいて

「ま、サボっちまったのは俺だけだしな。今日は休め、蓮」

「はい……」

蓮はしぶしぶといった感じでいま現在いるオペレーションルームから退室していく。それを確認したあと

「んで、仕事ってなんだよ。自慢じゃないが、情報あつめなんてがらじゃねぇからな」

「君がつかえないということは百も承知だ。今回はすこし、外にでてもらおうと思ってね」

「外だと?」

外にでる……というのは、だいたいは【レイヴン】の基地があるこのギガフロートの外にでる、ということだ。

その意味は、【アビリティ】としての捜査。野良【アビリティ】の連行、および処分の任務がだいたいとなる。そうなると、基本てきに外にでるのは二人ひと組のペアでなければならないという規則だが、二人ひと組というのは、チンピラや、やばそうな人たちが行っている【アビリティ】狩りを未然に防ぐための意味が大きく、刃の場合は、その心配はほとんどいらないのはたしかだった。

だが、戦闘となると別だ。刃はあまり自身の【力】を使いたがらないので、もしも【アビリティ】との戦闘にはいってしまった場合、極限までピンチにならないかぎり刃は【力】を使わない。そうなると、刃への身体の負担は大きくなり、そして、周りへの被害も甚大なものとなる。早期決着。被害を抑えるためには、いかに優れた【アビリティ】であろうとも、相性のよい、息のあった二人で行うのが効率がいいのだ。

だから、こういうふうに、刃にだけ、ペアではなく、単独で動かすような事例は、刃が【レイヴン】に所属するようになってから一度もないことだった。

「上から君たちペアにむけて【アビリティ】の捜査任務が来た。できればいまは仮面の男のこともあるし、あまり外にはでてほしくない状況だけど……」

結衣は、前に仮面の男と戦闘とはいえないほどの無残な敗北を知っている。だから、心配そうな目でこちらを見るが、その仮面の男について調べている以上、いつも以上に普段通りの行動を示さなくてはならない。それが理解できないほどの馬鹿ではないと、刃は自分のことを自賛する。