複雑・ファジー小説
- Re: デッドバスター 祝!3000参照突破!! ( No.145 )
- 日時: 2015/05/04 18:13
- 名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)
———勇魚司令官に、かぐやの王の鍵の強奪を任命されたとき背筋が凍った。
だってそれは、あの帝さんのものなのに。遺品なのに。
8年前かぐやがボロボロになりながら、大切にしたものだったのに。
「……その任務、三城隊は丁重にお断り……」
「……神光国家は竜堂を狙う。この任務断れば奴が攫われる確率が格段に上がる。……そうなるよりだったら、本基地に置いて“縛って”おいたほうがいいだろう?」
それって、監禁じゃないか。そう思った。
けど、かぐやを守れるなら。
そう思った、誓ったはずなのに。
当の本人は俺を目の前にすると悲しそうな眼をして。俺は心にもない言葉を投げつけて。
———嗚呼。結局俺はあの子を傷つけることしかできないんだ。
No16 ここにいて
「かぐや………っ」
音を立てずにかぐやは落ちていく。下は瓦礫やコンクリート。直撃したら死は免れない。
息をのむ様に吐かれた郡司の言葉。
だが、反射的には対処できなかった。花京院は車いすに乗っていたので尚更だ。
担架に乗せられた秀也は大きく目を見開いた。
————秀也!秀也はわたしを置いて行ったりしないでよね!
————……お前がそこまで言うなら、そうしてやる。仕方ないがな。
幼き日のあの約束。
彼女はきっと覚えてもいないだろうが俺はずっと覚えてる。
誓ったんだ。姉さんと帝さんが亡くなったあの日。どんな汚い手を使ったってかぐやを守る。
飛来じゃなくて俺が。
それが俺の使命————!
「かぐやぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
担架が壊れるほど秀也は高くジャンプし、かぐやの場所へ落下した。
落下スピードも速く、すぐにかぐやに追いつくが風圧がすごくて目もまともに開けられない。
だが、それも構うことなく秀也はかぐやの服をつかんだ。
「く……そっ!」
ガッとかぐやを抱きかかえると秀也はギンと彼女を睨みつけた。
「おい大丈夫か!?」
「え、ええ……」
「……お前、落ちたら瓦礫に直撃するところだったぞ」
「嘘!?危なかった……」
真下を見てかぐやは至極驚いたような声を出す。
そんな彼女を見て呆れたように秀也はため息をついた。
秀也は呆れながらも彼女を横目で見た。
「……着地できるだけの体力はあるのか?俺もそろそろ限界だが」
「無理ね」
「おーい秀也!」
「秀ちゃーん!かぐやちゃーん!」
どうしようかと悩んでいるときに、真下から仁と美也子の大きな声が聞こえる。
2人は大きく手を振っていた。
仁は手をメガホンのように形作る。
「さっき梶原さんがでっけー簡易式トランポリン渡してくれたからよ!何とかここで着地してくれよなー!」
「着地点しくじっちゃダメだよ〜〜〜〜!」
仁に続くように美也子も叫ぶ。
美也子は手早く簡易式トランポリンを作り上げる。
そして秀也に親指でグッとサインした。
いつもは殴られる対象の2人だが、今回ばかりは感謝の気持ちでいっぱいだ。
「……しっかりつかまってろ」
「わ、わかってるわよ!」
秀也に言われるがまま、ギュッとかぐやは彼の服の裾を握りしめた。
落下してしばらくしてからポーンと跳ね返る感触を覚えた。
つまり、無事着地することができたのだ。
「いやーびっくりしたぜ。瀬良さんが慌しく走るから事情聞いたらお前ら戦ってるっていうからさ〜」
「何で残念そうなんだ」
どこか残念そうに口をとがらせる仁。
秀也は冗談じゃない、と軽く仁の頭をかぐやを抱きかかえながらチョップした。
続けて美也子もホッと一息ついたように胸をなでおろした。
「しかも着いたら着いたらで2人とも落下してんだもん〜。梶原さんにトランポリン持ってけって言ってたのはこういうことだったんだ〜……」
「落ちたのは竜堂だ」
「え〜?でもさっき名前で呼んでたし、かぐやちゃんをお姫様抱っこしてるし秀ちゃんかぐやちゃんの中で絶対レベル上がったよね!王子様ランクが!あとちょっとで郡司さんに追いつくんじゃない〜?」
「……真っ二つにされたいようだな」
どこかからかう様な美也子の口調に軽く殺意を沸く秀也。
もしかぐやに聞こえてたらどうするんだ、と言いたかった秀也。
だが仁が秀也の腕の中にいるかぐやを見て「おお」と軽く声を上げた。
「かぐやの奴、寝てるわ」
「じゃあさっきの会話は……」
「聞かれてないね〜!って痛い痛い痛い!!!!」
これでもかとぐらいに美也子の頭の中心部分をグリグリ殴りつける。
彼女は痛みを堪えきれずに悲鳴を上げていた。
秀也からかぐやをバトンタッチした仁は楽しそうにつぶやいた。
「———寝かせてやろうぜ、かぐやを。ついでに秀也もな」
- Re: デッドバスター 祝!3000参照突破!! ( No.146 )
- 日時: 2015/05/05 16:52
- 名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)
「これで満足か?飛来」
「満足も何も……この結果を生み出したのはかぐやだ。俺は関係ないよ」
「関係ない?まるで他人事だな。竜堂が落ちた時助けるのも可能だったはずだが……?」
郡司と勇魚しかいなくなった会議室。
ジトッと勇魚は飄々とした態度を崩さない郡司を睨みつける。
勇魚の言葉に郡司は困ったように頭を掻いた。
「俺はどうすることもできなかったよ。秀也にしかできなかったことだ」
「そういうのは……最高戦力【トップエデン】のことか?それとも古文書のことか……?」
「どっちもですよ」
バッサリと言い放つ郡司。
てっきりどこか誤魔化すような口ぶりをするのかと思っていた勇魚は少し驚いたように目を少し大きく開いた。
そんな勇魚を見た郡司はますます困ったような表情をし——ベランダの空を見上げていた。
まるで、救いを求めるように。
「かぐやと秀也のことは大事に思ってる。勿論聖とか、バスターのみんなも。……でも、でもさ」
「—————俺はトップエデンに【依存】しているし、運命“騎士”に従うのも、嫌だったんだ。どうしても」
※
「んん……?」
パチッとかぐやはゆっくり目を開く。
先に目に入ったものは白い天井。この天井には見覚えがある。
聖と花京院を運んだ医務室の天井だ。
そのことに気が付くと首だけを動かした。
「……わたしも落ちぶれたものね。一応元エースなんだけど」
「その減らず口からして目は覚めたようだな」
「!!」
淡々とした声が耳に入る。
ガバッとかぐやは起き上がる。
彼女の右隣のベッドには秀也が寝ていた。
かぐやは酷く驚いて、口をパクパクさせていた。
「い、いつ起きたのよ!?というか起きてるんなら声かけなさいよ!」
「……起きたのはさっきだ。仕方がないだろう。お前の声で目覚めたのだから」
「悪かったわね」
独り言が恥ずかしかったのかかぐやはそっぽを向きながら顔を赤くした。
秀也はクシャッと布団を握りしめると、顔を伏せた。
「……今までのこと、済まなかった。お前は、逃げたわけでも裏切ったわけでもないのに……。俺はお前のことを殺そうとした。謝って済む問題ではないと思うが——」
「もういいの」
言い切っていない秀也の言葉を制止して、かぐやはふんわりと微笑んだ。
そんな彼女に秀也は呆気にとられる。
そしてかぐや同様ガバッと起き上がり、バン!と手を胸に充てる。
「なぜそんなことが言える!?今の俺はお前に何をされても仕方のないことをしたんだぞ。厳罰を受けたって仕方ない。なのにもういいだなんて……」
「秀也、殺すとか言っておいて結局非殺傷ブレイブでわたしと戦ったじゃない。……確かに勇魚さんの命令だったとはいっても首飾りを奪おうとした。でもさ」
痛む体に耐えながらかぐやはゆっくり立ち上がり秀也の手をそっと握った。
「だってわたしたち幼馴染じゃない!……友達、じゃない。だから厳罰とかそういうの関係ない!わたしがしたいからこうしてるだけ!秀也はそれじゃ嫌なの!?」
秀也はギョッとした。
なぜならかぐやはボロボロと泣き出していたからだ。
いつも気丈な彼女が。初めて見る涙だった。
「わたし……確かに秀也たちを裏切ったり1人にしたりしたけどみんなを忘れた日なんて1日もなかったわ。でも、郡司に戻って来いって言われてうれしくて。でもアンタは私のこと、憎んでるって思って……っ」
「憎んでない!!!!」
思わず秀也は叫んでいた。
そして思わず彼女の肩を思い切り握っていたのだ。
「俺は……俺はただ昔みたいにお前と話したかっただけだ。けど、ちゃんと向き合えずにいて本当に申し訳ないと思ってる」
ポカーンとするかぐやなど露知らず、秀也はパッと肩から手を離すと恥ずかしそうに視線を下に向けた。
そして言いにくそうに呟く。
「……もう1度。もう1度。俺と一緒にいてくれないか……?」
その言葉に少しの間、かぐやは真顔でいた。
だが、しばらくしたらバシッと両手で秀也の顔を抑え込んだ。
「当たり前じゃない!アンタがなんて言ってもずっといるからね!郡司も、仁も聖も!みんないるにきまってるじゃない!!」
「————ああ、」
そう言われた秀也は儚げに、嬉しそうに優しく笑った。
※
「思ったよりも元気そうだな」
「2人とも仲直りしたみたいだしね」
モニター室から監視する草薙と麗。
そんな2人の背後に嬉しそうに笑う瀬良と梶原がいた。
「……一件落着、ってとこですかね。梶原さん」
「ああ。エースも、塞ぎ込んでいた三城も復活して安心だ!」