複雑・ファジー小説

Re: デッドバスター  祝!3000参照突破!! ( No.151 )
日時: 2015/05/06 14:13
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)

———クローラ。……俺は、神になるよ。だから、君は生きてくれ———……。
———何言ってるのよ!あなたを犠牲になんかできるわけないじゃない!!
———……!クローラ!!!!

「……っ」

 ガバッと郡司は飛び跳ねるように起き上がる。
 背中にはびっしょりと冷や汗をかいていた。
 心臓はバクバクうるさい。
 落ち着かせるように頭をクシャッと掻いた。

「……違う……。俺は、騎士なんかじゃ、ない……!」






                          No17    最高戦力“トップエデン”




「かぐやさんかぐやさん!もう一線お願いします!!」
「また?懲りないわね聖」
 
 【あの日】から1週間たった。
 秀也やそのほかのメンバーとももう本当の意味で打ち解けるようになっていた。
 訓練室にて、キラキラと子犬のように目を輝かせる聖。
 そんな彼にかぐやは苦笑した。
 なぜなら、早朝に彼女が呼び出されたと思えば10戦ぐらい模擬戦を申し込まれ、それをすべて完膚なきまでに倒したはずなのにへこたれることなくまた聖は挑んでいたからだ。

「お前負けすぎじゃない〜?少しは間、置いたほうがいいと思うけどな。ずっと戦って立って進歩ないし」
「んなことねえよ!戦ってるうちに、かぐやさんの隙とか、弱みとか見つけられるかもしれないだろ!?」
「残念ね聖。わたしに隙はないわ!」

 勝気に笑うかぐや。
 ブーっとどこか不満げに頬を膨らませる聖を見て櫟はゲラゲラと大笑いする。
 櫟の頭をグリグリしながら聖は叫ぶ。

「わーらーうーなー!よし、少しでもかぐやさんに近づけるようにまた特訓だ。付き合え櫟!」
「え〜……?やだね、神宮寺一度戦うと止まんないんだもん」
「うるさい!つべこべ言うな!CランクだったらBランクの言うことを聞け!」
「格差反対〜!この平成のジャ○アン〜!!」

 櫟の首根っこをつかんで聖はズルズルと訓練室へ向かう。
「次は勝ちますからね、かぐやさん!」と笑顔で叫んだ。
 そんな彼らを見届けながらかぐやはフッと一息をついた。

「……こりゃあうかうかしてらんないわね」

 だが、何かを思い出したかのようにかぐやは眉をしかめ、スマホを取り出す。

「ていうか、いくら土曜日だからって郡司ってばいつまで寝てんのよ!もう午後の2時よ!?」

 電話をかけようとしたその次の瞬間だった。

—————ドドドドドドゴオゴゴゴゴオォオオオオオン!!!!!

 ものすごい、轟音だった。
 ヘタな殲滅者駆逐の時の破壊音よりもすごい音だった。
 鼓膜が破けそうなぐらいに。
 ちょうどその時のロビーにはかぐや1人しかいなかったがほかのバスター隊員がいたら被害が出ていたのではないか。
 そうかぐやは思った。

「……やっぱり、入口から入るものですね。音がひどくて鼓膜が破れそうです」

 透き通るような声が響く。
 つまり、ロビーの壁を盛大に破壊した張本人だ。
 そこにいたのは身長こそは平均ぐらいだが顔つきは可愛らしく、中学生ぐらいの少女だった。

「あ、あんた……。誰?」
「……?お初にお目にかかります。バスターSランク隊員神代くじら(かみしろくじら)。以後、お見知りおきを」

 淡々と、表情を変えずにペコッとくじらは深々と頭を下げた。
 開いた壁からヒュウッと冷たい風が吹き抜けていた。

Re: デッドバスター  祝!3000参照突破!! ( No.152 )
日時: 2015/05/09 17:24
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)

「……おいしいですね」
「……そうね」

 ロビーのソファにて、かぐやとくじらは売店のたこ焼きを食べていた。
 無表情ながらもくじらの表情は嬉しそうであるが、破壊された壁の一件もあるのか、かぐやはどこか顔が引きつっていた。

(……わたしもかなりの古株だけどこの子はみたことないわね。……新入りにしてはSランクだなんてありえないけど……)
「私はこれを食べたらすぐに消えますね。勇魚司令官の目を盗んでここに来たんです」
「?え、勇魚さんから?」
「はい」

 ムッシャムッシャ音を立てながらくじらはたこ焼きを完食した。
 どこかかぐやを察したように呟くくじら。
 その横顔はどこか憂いを帯びていた。

「でも、ひさしぶりに人と話せてよかったです。……これでもう何も思い残すことも……」
「え?何よ、最後聞こえなかったわ」
「ふぁふや〜(かぐや〜)」

 間抜けな声がかぐやの背後から聞こえてくる。
 そこにいたのは寝起きだと一発でわかる郡司だった。
 かぐやは呆れながら彼に近寄る。

「何よもうその寝癖!アンタ土曜日だからって浮かれすぎよ、シャキッとしなさいシャキッと!ねぇ、くじら」
「……っ!」

 そう言ってかぐやが振り向いた瞬間、そこに彼女はいなかった。
 先ほど買ったたこ焼きのゴミもなくなっていた。
 郡司は1瞬目を見開いた。
 そしてかぐやにゆっくりと語りかける。

「今……くじらって……」
「そうよ。神代くじら……って言ってたわ。Sランクですって。中学生みたいだったけど」
「……そう、か」
「いくら寝起きだからって曖昧な返事はやめなさいよね」

 怪訝な目でかぐやは郡司を見つめる。
 だが、そんな彼の顔を見た瞬間、ギョッとした顔になった。
 なぜなら、彼の顔は真っ青だったからだ。

「ちょ、アンタ顔真っ青よ!?具合でも悪いの?」
「……なんでもない……」
(くじら。何で俺から姿を消したんだ……?)

————ブー!ブー!
 そこに、殲滅者が出没したというブザーが鳴った。

『南部に殲滅者出現!隊員はすぐ対応するように!出現数50!』
「ご、50ですって!?」
「いくらなんでも多いな」
「でも……行くしかないでしょ!」

 そう言って2人は廊下を走り出した。






「昔、あれほど破壊したはずですがまだいたのですね」

 破壊された瓦礫の突起物に立ちながらくじらは50もある殲滅者をボーっと見つめる。
 そしてスッと手を突き出した。
 ブワッと周囲に風圧が起こる。

「————数だけでは私を殺せませんよ、クローディア。私がいる限り、世界は終わらせない」