複雑・ファジー小説
- Re: デッドバスター ( No.191 )
- 日時: 2015/06/20 17:12
- 名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: lcUCuO5M)
「あとどんだけ走りゃあいいんだ!?」
「あと少しのはずだ。でっかい柱が見えるはず」
じれったそうに叫ぶ仁の問いに冷静に郡司は答えた。
そのまま走っているかぐやたち一向。
すると、足元に物凄い寒気を感じた。
「うううっ。なんだか寒〜い……」
「さっきまでは平温だったのに……!?」
寒そうに肩を抱きしめる美也子を温めるように手を握るかぐや。
警戒しながらきょろきょろとあたりを見渡すが、特に目立った痕跡もない。
無言で秀也は通路の左側にあった扉に向かって歩く。
すると、躊躇なく如月で一刀両断した。
切り刻まれた扉とともに出てきたのは胴体が2つになってしまったイリヤだった。
「殺気が丸出しだ。こんなものど素人でもわかるぞ……?」
「はははっ。さっすがレオンを倒すだけの人間が集まってるだけのことはある。俺の殺気が出ていたとはいえ、すぐにばれちゃうなんてさ」
胴体が2つになっているはずのイリヤの体。
だが、その胴体の間から冷気が漏れ出し、ガチガチと音を立てながら少しずつ元に戻っていく。
「……レオンは最初敵に隙を与えるような行動をしていたみたいだけど——俺はそうはいかないよ。すぐに…終わらせる!クローディア様の為にも!」
————−バキバキバキバキ!
と、上空から氷柱が作られる。
「美也子!」
「OK!」
秀也に名を呼ばれた美也子はすぐさま輪廻ですべての氷柱を叩き落とす。
完璧に叩き落された氷柱を見て、イリヤは軽く拍手をした。
「おー、やるじゃん。じゃあこれは!?」
ヒュゴォォォォ……。と凄まじく冷たい雪風が横から吹き抜ける。
吹き抜けるだけではない。
確実にイリヤ以外の全てを死に向かわせていた。
「うおっ!さっぶ!」
「アトラスの時とは格が違うってことね……!」
「当たり前だよ。弱気ゆえに生を手放したアイツとは違う。確実に騎士と姫以外の命は貰っていく」
手を突き出しながらイリヤは勝気な笑みを浮かべて言う。
くしゃみをしながら仁とかぐやはブルブル震えていた。
秀也は容赦なく仁の頭を殴り飛ばす。
「動け。もうすれば少しはましになる。……おい!」
「【おい】でわかる私って天才かも〜」
秀也に顔を向けられた美也子は全てわかったように輪廻を郡司とかぐやの足元に向けて連射した。
もちろん2人にけがはないが、疑問はある。
「な、何すんのよ!?」
「素直じゃないなぁ、秀也は。行こうぜ、かぐや」
「ちょっと、教えなさいよ!」
引きずられながらかぐやは郡司の腕に連れ去られてしまった。
その様子を見てイリヤは少し不機嫌になり、チッと舌打ちをした。
「あーあ。貴重な生贄たちが。まあいいや。こいつら殺したら後で捕まえよ」
「できたらな!」
仁が好戦的な目を浮かべて槍を構える。
美也子は肘で秀也の脇を突いて言う。
「素直に言えばよかったのに〜。ここは俺に任せて先に行けって」
「黙れ。只、ここが俺たちの戦う最良の場だと考えただけだ」
「またまた〜。じゃあさ、俺等ががんばったらお礼にかぐやに告白しろよ、秀也」
「……!?ふざけるな、なぜそうなる」
雰囲気に似つかぬ仁の言葉にガンスタイルを構えた秀也は驚きであんぐり口を開ける。
便乗するように美也子も言った。
「私もそれがいいな〜。だって、10年以上も片思い拗らせてる秀ちゃんもう見たくないし」
「黙れ!」
「きゃんっ」
耐え切れなくなった秀也は顔を真っ赤にしながら美也子の頭を思い切りチョップした。
- Re: デッドバスター ( No.192 )
- 日時: 2015/06/21 15:13
- 名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: lcUCuO5M)
————ズガガガガガガ!
————ドドドドドドド!
目に負えないスピードで秀也はガンスタイル、美也子は輪廻でイリヤを取り囲むようにブレイブを連射した。
「おらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
———ガキィ!
2人の援護を受けながら仁は槍でイリヤに攻撃する。
だが、当のイリヤはフウと呆れたようにため息をついた。
「……この程度?」
ブワッ!と強烈な冷風が3人を襲う。
仁も、秀也も美也子も吹き飛ばされていた。
もちろん銃弾も。
「秀ちゃん、私たちの銃弾もあの氷の盾で防がれちゃうよ〜。どうする?」
「それはいつものパターンでいいだろ。俺がアイツの形成を崩してそこに打ち込めばいい」
「打ち込めないからこうやって話しているんだ」
「……へーい」
ぴしゃりと言い放たれた仁。
美也子はへにゃりとしまりのない顔で苦笑した。
そんな2人にも構わず秀也はツンとすまし顔だ。
(……そんな顔見せずに笑えばいいのにさ。かぐやの前でも)
戦闘中に何を考えているのだろうと自分でも思う。
だが、なぜかふと思ってしまうのだ。
そんなことを考えているとき、イリヤが再びため息をついた。
「はーあ。こんな張り合いのない奴らと戦うんだったらあのかわい子ちゃん……じゃなくて、かぐやって子と戦いたかったよ。興味あったのになぁ」
(あ)
「……なん…だと……?」
「かぐや」と言ったイリヤの言葉に唸るように秀也は呟く。
そしてスクッと立ち上がった。
仁は自分のことのように口を押えた。
「貴様ごときが軽々しくその名を出すな。虫唾が走る」
「なんでお前がそんなこと言うの……ああ!そうか、かぐやが好きなんだ、お前」
「———黙れ」
イリヤの氷より氷点下のような秀也の声が響いた。
その瞬間、秀也はイリヤのすぐ真下にいた。
(———こいつ、はや———……!)
———ズバン!
如月による秀也の斬撃はイリヤの氷の盾を貫いて彼の頬をかすった。
幸い、イリヤの氷の盾は厚かったため、その程度の傷で済んだ。
すかさずイリヤは床から氷の突起を出すが秀也はヒラリと避ける。
「あわわわ……。あの子、秀ちゃんのNGワードを〜……!」
「いや〜、ただ単に秀也が嫌なだけなんだろ。ほかの男に自分の好きな女の名前出されるのが」
「なにそれ怖っ」
「聞こえているぞ」
ヒソヒソと耳打ちしあう仁と美也子。
そんな2人を秀也は横目でじろっと睨んだ。
イリヤは悪鬼のような笑みを浮かべて秀也を指差した。
「……OKOK、お前らの実力は把握した」
ヒュウウウウウ……。
と、さらに冷たい冷気が彼を吹き抜ける。
フワフワと浮く彼の髪の毛はまるでメデューサのようだった。
「お前らも聞いたろ?伝説の話」
さらに、冷気は高まる。
「でもさ、俺は伝説に忠誠を尽くしてるんじゃないよ。あいにく信仰心なんか欠片も持ち合わせちゃいないから。だけどクローディア様が神を蘇らせるつもりなら古の神は確かに存在したんだろうし、俺はそのためにならなんだってする。……つまりはそう、それを邪魔するてめェらは問答無用で片っ端から敵ってことだ!!」
ギラリとした目を浮かべながらカッとイリヤは目を大きく見開いた。
No25 不器用