複雑・ファジー小説

Re: デッドバスター  ( No.193 )
日時: 2015/06/24 19:57
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: lcUCuO5M)

「……気を抜くな、仁、美也子。奴の雰囲気が変わった」
「わかってるよ、そんなこと。殺気がビンビンだぜ」
「……うん」

 髪の毛まで凍りそうなイリヤの冷気。
 秀也の警戒の言葉に仁と美也子は同時に頷いた。
 そして3人はジャッと半歩下がった。

「らぁぁぁぁっ!」

———ヒュゴッ!
 上空から仁の槍による突きがイリヤを襲う。
 イリヤはその攻撃を読んでいたかのように手のひらを仁に突き出す。
 そして、氷のつぶてを放出する。

「させないっ」

 パンパンと仁に襲い掛かる氷のつぶてを美也子が輪廻で撃ち落とす。
 上からは仁の攻撃で受け止めるのは手一杯だろう。
 そう考えた秀也は下から如月を振り上げる。

「甘い」

 淡々と呟いたイリヤ。
 きっと1瞬にも満たない2人の攻撃を腰を曲げてズザザッと低空ジャンプすることで難を逃れた。
 そしてコキッと首の関節を鳴らしたイリヤは面倒くさそうに言い放った。

「……やっぱ3人はごちゃごちゃいるからサクッと殺せないんだよね。クローディア様の儀式は早く始まったほうがいいし……。あ、そうだ」

 パン!とイリヤは両手を合わせた。
 ズズズ……。と氷の牙が美也子を囲む。

「美也子!避けろ!」
「キャアアアアア……」
「……くそっ!」

 仁が美也子に向かって叫ぶ。
 だが、氷の牙は美也子の伸長をかなり越してしまい、彼女が飛ぶのには無理があった。
 秀也は如月で1本、氷の牙を切り裂くと美也子の背中を思い切り押した。

「……秀ちゃん!」

 美也子の悲痛の悲鳴もむなしく、彼は氷の牙が囲む氷のドームと化したところに閉じ込められてしまった。
 クツクツとイリヤはその様子を見て笑った。

「仲間なんか助けようとするからこうなるんだ。じゃ、お二人さんは【一旦】ここで休んでてよ。俺は秀也ってやつと戦ってくるから」
「おい待て————!」
「こいつを殺したら次はお前らを殺してやるよ」

 ズズズ……。と氷のドームに入っていくイリヤ。
 入っていく彼の目は殺意しかなかった。





              No26      凍て付く躰




「……ここは」
「俺の氷のドームさ。俺のソウルブレイブ——氷の主のね。アトラスのおさがりってのが唯一気に食わないけどさ」

 白い息を吐きながらドームを見上げる秀也。
 そんな彼に説明するのは悪裂な笑みを浮かべたイリヤだった。
 その表情は残酷、という言葉がぴったりだろう。
 だが秀也はそんなことに屈せず、ガンスタイルを彼に向ける。

「氷のドーム……?そんなもの、撃ち落とせば簡単に抜けられる」
「残念。このドームは俺を殺さないと出られない仕組みさ。アトラスなんかと一緒にすんな。もちろん外部からの攻撃からでも出られない。とっとと出るのが得策だけど生憎俺にそんな気はない。————このまま時間が過ぎれば凍傷か凍死だね、君」

 スウ……。と唇を人差し指で撫でながら妖艶にイリヤは嗤う。
 秀也はそんなこと構わずガンスタイルと如月を両手に持つ。

「だったら貴様を殺す。それだけだ」

Re: デッドバスター  ( No.194 )
日時: 2015/06/27 19:57
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: lcUCuO5M)

「殺す……?君にそんなことできるわけないじゃんっ!!!!」
「……これは………」

———ビキビキビキ。
 氷の床から何かが出現していた。
 しかも、1体だけではない。
 10、20,30、いや、それ以上の数の————……。

「じゃあこっからは君を殺すゲームだ。ここにいる俺の氷分身は1万人。このドームの温度はマイナス20度だから10分以内に出ないと凍傷起こしちゃうよ〜」
「何度も言わせるな。その10以内にお前を殺すのみ」

 ガンガンとガンスタイルで秀也はイリヤの氷分身を撃ちぬく。
 だが、撃たれた部分がゆっくりだが元に戻っていた。
 イリヤはからかい半分でドームに背持たれる。

「そいつらは全部粉々にしないと消滅せずに回復するよ。だってここは氷のドーム内なんだからいくらでも復活できるんだしさ。残念だったね」
(……かぐやから氷の主のソウルブレイブについては聞いていたが……話以上だな。これ以上ここにいたら確実に死ぬだろうな)

 ジャコッとガンスタイルを下す秀也。
 そして、その場にドスッと座り込んだ。
 そんな彼にイリヤはヒュウッと口笛を吹いた。

「どうしたの?もうあきらめたの?」
「とりあえず10分は手を出さないことにした」
「はあ?意味わかんないんだけど」

 イリヤの怪訝な顔に比例するように氷分身たちも首を小さく傾げていた。

(……頼んだぞ、仁、美也子!)






「秀ちゃん……」
「美也子。責任を感じんだったらさっさと秀也をあそこから出すぞ。なんかやばそーだ」

 座り込んでいた仁が立ち上がる。
 同じように先ほどの自責の念からまだ顔こそは上げたが体は立ち上がらない美也子。
 仁は無理矢理美也子を立たせると、目の前にそびえたつ氷のドームを見据えた。

「俺は秀也ほどの頭はねーからよ、この壁をぶち壊すって選択肢しかねぇ!」

 ガガガガガガ、と槍で思い切り突きまくる仁。
 美也子はポカーンとしてその様子を見ていたが、彼の右腕を見てハッと目を大きく見開いた。
 なぜなら、彼もイリヤの攻撃を受けていたためだ。
 仁の右腕は薄く氷が張っていた。
 槍を持つだけでもやっとだろうに。
 それを見た美也子は覚悟を決めたように立ち上がり、輪廻を構えた。

「——仁ちゃん!闇雲に攻撃してちゃダメ!同じところに集中的に攻撃すれば壊せるかもしれない〜」
「……OK!それで行く!」

 槍の突きと輪廻の銃撃が氷のドームに打ち込まれる。
 ドンドン、と大きく響き渡った。

「あー、これ、外部からも攻撃しちゃってる系?無駄なのにねぇ、隊長が攻撃を放棄して……っておい!何する気……」
「よくやった仁、美也子!」

 ドンドンと聞こえる場所に秀也は口に弧を描くように笑った。
 そして、それを止めようとしたイリヤの前にすかさずガンスタイルを撃ち込む。
 ピシッと罅が入った。
 そして、それを如月で思い切り斬り伏せた。

「しま……った……!」
「外部からでも内部からでも破壊できない。だったら同時に外内部から攻撃すればこんな氷壊せる。簡単な話だな」

 パキン、と氷のドームが割れ、秀也は仁たちの所へと歩み寄る。
 その様子を見てイリヤは歯を食いしばりながらブルブルと拳を握り、震わせていた。