複雑・ファジー小説
- Re: 虹至宝【キャラ募集一時終了】 ( No.15 )
- 日時: 2015/01/01 11:08
- 名前: kiryu (ID: nWEjYf1F)
- 参照: 保留解除。>>14を更新
崩落の危険性があるユグドラシル遺跡から脱出すべく、ジェシカは猫に変身し、疾風の如く来た道を戻り始めた。
しかし、道中が全て岩で囲まれた道だったということで、現在は非常に危険な状態である。
来た道を戻るということはつまり、それなりに本格的な登山に近い。ただでさえ木々の根が行く手を阻んでいるというのに、斜度は明らかに45度を越えている。まさに難攻不落の山道だ。
その上想定外の事態として、来る最中に切って落としてきた枝葉や雑草が足を滑らせる要因となっており、進行は更に困難を極めている。
ましてや今は落盤の最中だ。大規模なものは未だ起きていないが、小石が降ってきたり、明らかに危険そうな亀裂が入ったりと、頭上にも注意をせねばならないのである。
しかし、そこは猫。ジェシカは余裕こそ見られないものの、上手い具合に隙を縫って道を戻っている。
アレンも負けじと、即席の錬金で作り上げたスプリングシューズとヘルメットを装着し、ジェシカとほぼ同等の速さで彼女を追いかけている。が、時折ヘルメットに降ってきた小石が当たるのだが、アレンはその都度小さな悲鳴を上げていた。
「男の癖にだらしないね、アレン!」
「うっせぇ! 無駄口叩いてないで、はよ脱出せい!」
「そ、そんなに怒らなくても……ちょっと冗談言っただけじゃん!」
——このような危機的状況においても痴話喧嘩するところを見ると、まだ2人には余裕がありそうである。
◇ ◇ ◇
「はぁ、はぁ……」
「あ、危なかったぁ〜……」
その後間も無くして、2人は無事、遺跡から脱出することに成功した。
アレンは1人で息を切らせているが、猫の姿になっているジェシカは特に息を切らしていない。
流石は猫又。アレンは腕の中にいる彼女を黒い毛並みを撫でながら、普通に感心していた。
「ねーねー、アレン」
「どうした?」
それから数分の沈黙の後、アレンの呼吸が整ったのを見計らい、ジェシカは彼を見上げて話しかけた。
相変わらず、金色の瞳が美しい。
「あたし、服を遺跡に置いてきちゃったんだけど」
「ふぁ!?」
途端、アレンは素っ頓狂な声を上げた。
確かに今のジェシカの周りには、服と言えばアレンが着ているもの以外に何も見当たらない。
さっきまで着ていたポンチョのような布はどこへ行った——周囲を見渡すが、やはりというか見つからず。
「何で持ってこないの!」
「しょうがないでしょ、慌ててたんだし」
「……まー、それもそうか」
溜息をつき、少し納得するアレン。
これは猫又族の弱点であった。
猫の姿から人間の姿になったとき、猫又装束と呼ばれる一族専用の服を着ていないと全裸になってしまうのである。
そんなこともあってジェシカは現在、猫又装束を探すことが当面の旅の目的となっている。
「……間違っても人間の姿になるなよ?」
「えー、いーじゃん別に」
「何で? 逆に聞きたいんだが」
「だってここ人いないし、案外人間の方が色々楽だし、あたし盗みに入るときいっつも裸だし」
「理由になってないので却下」
「ぶーぶー」
「うっせぇ! 布ぐらいすぐに調達できるから、ちょっと我慢してろ」
仕方ないので、アレンはギルドへの報告ついでに城下町の店に寄ることにした。