複雑・ファジー小説

Re: 虹至宝【キャラ募集一時終了】 ( No.16 )
日時: 2015/01/01 17:42
名前: kiryu (ID: nWEjYf1F)

「……以上です」
「……」

 アレンは王国のギルドへ足を運び、そこにいるギルド長"ナタリア・アヴェイジア"に事の結果を報告していた。
 ユグドラシル遺跡の内部は、木の根で埋め尽くされていたこと。最深部の台座には秋刀魚が置いてあって、それが近くにあった壁の型にピッタリ嵌ったこと。遺跡の調査を終えて出ようとしたら、内部が崩落してしまったこと。
 あくまで真面目に、全てを話した。しかし。

「……まさかアレン、君が嘘を吐くようになったとはね」
「あの……嘘じゃないです」

 ある意味というか、的中して欲しくもない予想が的中してしまった。
 アレンが話した内容に疑いをかけているナタリア。年齢的には彼女の方が年上だが、身長はアレンの方が高い。
 そんな彼女は2つに纏めた紫の長い髪を肩から振り払うと、睨むようにアレンの蒼い瞳を見た。

「本当に嘘じゃないんだね? このまま国王様に報告しちゃうよ?」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ、よし」

 だが物分りがいいのか、ナタリアはあっさりと彼の話を信用した。

『何とかなったか』
『あたしも、信じてくれるとは思わなかったよ』
『それな』

 腕の中で丸くなっているジェシカ。
 彼女を見て、アレンは布を調達せねばならないことを思い出した。

「はぁ」

 思わず溜息が出る。

「どうしたの?」

 それに思いも寄らない助け舟を出したのは、書類を纏めているナタリアであった。

「いや、この猫なんですが……」

 アレンはジェシカをカウンターの上へ乗っけた。
 乗っけられたジェシカは大人しくその場で丸くなる。

「この子、ジェシカっていう猫又族なんですけど、猫又装束を着てないらしいんですよ。なので、適当な布切れでもいいから肌を隠すものが欲しいって言ってきて」
「あー、なるほどね」

 ナタリアは、ジェシカの背を撫でながらアレンの話を聞いていた。
 撫でられているジェシカはすっかりナタリアの事が気に入ったようで、彼女の手を舐めたりして愛情表現をしている。

「可愛いねっ」
「黙ってれば、ですが」
「あはは、否定はしないんだ? 素直に認めてるアレンも可愛いっ」
「か、からかわないで下さいよ」

 若干赤くなるアレンを見て、ナタリアはさらに笑った。
 気のせいかジェシカも笑ったような気がして、アレンは若干の殺意を篭めて彼女を睨む。
 しかし、目線は合わなかった。

「猫又っていうことは、やっぱり喋れるんだよね?」
「喋れるよ!」
「きゃっ! い、いきなり喋らないでよ。びっくりしたなぁ、もう」
「にゃはは」

 猫又族特有の笑い方をするジェシカ。
 するとここで、彼女の胸の辺りが白い光を放ち始めた。

 ——姿が人間になろうとしている前兆である。

「おい、ジェシカ——」

 慌てかけたアレンが止めに入る。
 止めに入る傍ら、何も知らないナタリアは只首を傾げるばかりで、何もしようとしていなかった。
 だからだろうか。彼がジェシカの身体を抱き上げても、既に遅かったのは。