複雑・ファジー小説
- Re: 虹至宝【キャラ募集一時終了】 ( No.18 )
- 日時: 2015/01/01 20:52
- 名前: kiryu (ID: nWEjYf1F)
猫又族が人間の姿になりたがるのには、真っ当な理由がちゃんと存在している。
そもそも猫又族は、元々はただの猫。それが、とある人間に憧れた猫がある日突然に変異進化したとされており、その進化した猫の子孫と、それに連なる種族を猫又族と呼んでいる。
進化した経緯は諸説あるものの、現在ではこの説が一番有力である。
現に町で見かける猫又族は、猫の姿より人間の姿で生きている時間の方が長い。これも人間に憧れている証拠だろう。
——その後アレンが、猫に戻った途端に何故か眠ってしまったジェシカを置いて町の図書館で猫又族について調べてみると、こんな情報が開示されていた。
『ふーん……俺の知らないこと、まだまだ沢山あるんだな』
アレンはジェシカと接触しているため、それなりに猫又族については詳しいつもりだった。
だが、今しがた興味本位で図書館を訪れ、調べてみた結果がこれだ。
たかが小さなこと1つにしても、それに広がる世界は広い。アレンはこれによって痛感した。
「あのー」
「?」
すると突然、アレンは見ず知らずの人に話しかけられた。
小柄な体型に、オレンジ色のふんわりとした髪質、緑の瞳が特徴的な少年である。
「何か?」
「この辺りで、猫又族について書かれた文献を見かけませんでしたか?」
「猫又……あぁ」
丁度手元にあるではないか。
これかと聞きながら、アレンは手に持っていた本を少年に見せた。
「はい、これです。これと同じ本、見かけませんでしたか?」
「あー、丁度いいや。これ持ってきなよ」
「え、いいんですか?」
「あぁ、もう読み終わったからね」
——もっと言えば、片付けるのが面倒だ。
アレンの本音としてはそんな感じだったが、その言葉は声に出す前に飲み込んだ。
「ありがとうございます!」
「うん。勉強頑張れよ」
「はい!」
少年は受け取った本を、早速貸し出しカウンターへと持っていく。
アレンはその様を見送った後、そろそろギルドに戻ろうと、来た時よりも重くなった気がする腰を擡げる。
しかし、よっこらせという掛け声がないと立ち上がれなかったので、今日は早めに休もうと思うのだった。