複雑・ファジー小説
- Re: 虹至宝【早速キャラ募集】 ( No.6 )
- 日時: 2014/12/30 16:46
- 名前: kiryu (ID: nWEjYf1F)
この度アレンが請けた依頼は、ヒストリア王国の現国王"ジェラルド14世"より直々に依頼されたものであった。
曰く、城下町より西に数キロ離れた場所にある"ユグドラシル遺跡"の調査に赴いてもらいたいのだという。
遺跡などの未開の地へギルドが単独で赴くのは、今までに例を見ないことであった。
国王が言うには、遺跡の調査に割ける人員がいないのだという。
ギルドは本来、庶民に対しても国家に対しても完全な中立を貫いているが、国家はギルドに圧力をかけており、いつどのような卑劣な手段に出るか分かったものではないと、頑なに彼らを信用していなかった。
これは主に、庶民から国家よりも大きな信頼を得ていることが要因となる。
だが現在は、北に位置する大規模な民主主義国家"アルト共和国"と、南に位置する小規模でも大きな力を持つ"シエル皇国"の両者が、国境付近にまで偵察部隊を派遣し、ヒストリア王国の威力偵察を行っていた。
そこで、何時戦争が勃発するか分からないとのことで、国王は不本意ながらギルドに遺跡の調査へと赴かせたのであった。
遺跡も遺跡で、調査せずに放っておいたら実に危なっかしい。これまで調査せずに放置してきた遺跡では、何故か魔力が暴走する現象が見られていて、一時期その暴走を食い止めるために一苦労も二苦労もしたのだという。
そんな危険に身を曝さねばならない遺跡の調査だが、アレンはこれを1人で請けていた。
丁度人手がなかったのか、彼が腕に自信を持っているのか——理由はその両者だった。
後ほど3人くらいの人員を遣わせるとギルドの支配人は言っていたが、正直来てくれるかどうかは微妙である。
だが、それはどうやら杞憂だったらしい。代わりとなる人物が1人、彼の隣にいた。
「あたしがいれば、百人力でしょ?」
「まあ、違いないね」
いつの間にか、小柄な少女が金魚の糞のようにひっつき歩いていた。
その少女の名を"ジェシカ・アルク"といい、世界を復に駆けて盗みを働く大怪盗である。
猫又という猫にも人間にもなれる特殊な種族の特性上、彼女は盗みを働くのには打って付けだ。怪しまれる前に猫になればすぐに身を隠すことができる上に、万一見付かっても簡単にはばれない。それを理由に彼女は、今まで怪盗という仕事をしてきた。
そんなジェシカとアレンとの関係はというと、日常生活の中で起きた偶然の出逢いから始まる。
アレンが迷い猫を探すという簡単な仕事を受け持った折、見つけた猫をジェシカと間違えた——こんな簡単な経緯から2人は知り合いになり、何故かそこから瞬く間に仲良くなった。
「今日もどこか盗みに行くのか?」
「んー、今日は休業かな」
「どうして?」
「だってアレンと会えたんだもん! たまには一緒に遊んで欲しいのっ」
アレンから始まった何気ない会話は、互いの立場から考えれば突拍子もない言葉を招く。
しかしアレンは、ジェシカの申し出を快く引き受けた。
確かに、最後にジェシカと会ってから早数ヶ月が経とうとしている。
ましてや、怪盗といえど未だ幼い彼女は稀にホームシックを起こすこともあるので、せめて会えたときには沢山構ってやるべきだろう。
「よし、じゃあ仕事が終わったら遊ぼうか」
「えへへ、ありがとう!」
アレンは自分よりも小さなジェシカの頭をなでた。
猫の面影を残す彼女の猫耳はとても肌触りのよいもので、ピクピクと動く度にそれが本物であることを告げている。
序に言うと、尻尾も本物のそれである。猫又族はこうして人間になると、稀に猫の面影が形として現れることがあり、まさにジェシカは典型的で非常に分かりやすい例だ。
片や形として残る面影は人によって様々らしいが、正直言ってアレンはどうでもいいと思っていた。
どちらにしろ、目の前で笑う少女は可愛らしいのだから。
『……俺は変なこと考えてない。考えてないぞ、うん』